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『ローン・サバイバー』──はじめてアウェイの厳しさを描ききった [映画レビュー]

『ローン・サバイバー』(ピーター・バーグ監督、2013年、121分、原題『LONE SURVIVOR』)

 

 本作を見ると、アメリカの軍隊は開かれ、かつ高度に組織化され、高い倫理を持ち、作戦においても精密であることがわかる。その軍隊のなかでも海軍のシールズと言えば、肉体も精神もえり抜きの兵士たちである。そんな兵士たちも、「アウェイ」においては苦戦せざるを得なかった──。

 

 作戦の目標地点は、アフガニスタンの山中であり、そこに隠れるタリバンのリーダーを暗殺するのが目的である。このアフガニスタンの山というのが岩ばかりでできた山で、なかなか手強い。いくら訓練された最強の兵士といえども、ふだんの訓練を上回る厳しさが待っている。たまたまの小さなアクシデントが、不運によってさらに拡大され、人間性の倫理によっても裏切られていく。「もしもあの時……しなかったら」は、あり得ない。4人のシールズは200人のタリバン兵(数もさることながら、彼らにとってこの岩山は、「ホーム」であるので、ある意味知り抜いていると言える)に囲まれ、岩場を、撃たれ、撃ち返し、また撃たれ、血みどろになりながら、血を吐きながら、決してあきらめず、瀕死の自覚もなく限界を超えて抵抗し、激しく転げ落ちていく──。そこのところを、実にリアルに描いている。

 

 映画は、戦争の善悪とか、人間性とか、そういった抽象的なテーマに関与しない。ただ、アウェイとはなにかを見せつける。

 主演のマーク・ウォールバーグは、題名通りの、「ただ一人の生き残り」となるが、とくに派手な演技はしない。彼のあっさりとした淡泊な持ち味が、血生臭い本作を、すんでの所で、清らかなものに変えている。

 


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