【絵と詩】「バスの中でスマホを見る女」 [詩]
「バスの中でスマホを見る女」
窓ガラスに映るスマホの画面は、
かつて夢見た未来の国の遊園地のようだ
江戸時代の女がごくあたりまえに、
お歯黒を塗ったように、
ごくあたりまえに、スマホを出して見る女
の頭はからっぽ。
何も考えてない。
おのれの未来さえ。
あんたが、やがて年老いて、年金なんか計算して、
すでに誰にも振り向かれず、
けれど、まだ若いと信じて、
ちょっと遅れたバージョンの
スマホを取り出して、見ている。
GAMEか、LINEか、SNSか。
よくみてごらん、あんたが信じる
NETのなかは、すでに累々たる死人でいっぱい。
すでに百年経っているから、
ユーザーたちはみんな死んでしまった。
いや、生きているユーザーもいる。
それは、彼らの子孫で、ゴミ捨て場で拾った
スマホのスイッチを入れている。
幽霊サーバーはどこかにあるらしく
「キャピーン」と反応する。
そう、一生気づきもしないだろう、
誰かが百年前に、あんたの後ろ姿を
描いていたことなんて──。
コメント 0