【詩】「きみの名前でぼくを呼んで」 [詩]
「きみの名前でぼくを呼んで」
桐に藤いづれむらさきふかければきみに逢ふ日の狩衣は白(塚本邦雄『源氏五十四帖題詠「桐壺」)
失われた魂と救われた魂。
影と影。
《Or puoi la quantitate
comprender dell'amor ch'a te mi scalda,
Quand'io dismento nostra vantitate
trattando l'ombre come cosa salda》
「これでぼくがきみに対してどれだけの愛情を
持っているか、わかるだろう。ぼくは、ぼくたちが
影であることを忘れて、それが実際にあるもののように
ふるまっているんだ」
空(から)の詩
空中にあがった水しぶきを通過する光
宇宙のきれはし
きみのまなざしのなかの
赤く熟れた果実
固有名詞はいらない、ただ
きみの名前でぼくを呼んで
そうすれば、きみの瞳に映った
ぼくを愛撫することができる
そうやって、決別に打ち勝つのさ
失うことによってしか得られないものがあるんだ。
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