【詩】「火、あるいは二重らせん」 [詩]
「火、あるいは二重らせん」
袖のうへはひだりもみぎもくちはてて恋はしのばむかたなかりけり
火がなにか語ろうとしている。
それは遠い都の泥土の夢か、人の肌の脆い箱船か
都は次々移され、いまはどこかの土の固まった上にある。だがそれも、
初期微動継続時間、それだけがかつて習った中学理科で
唯一覚えていること。
甥と叔母が婚姻を結ぶおおきみの系図の
忌まわしい予感も土の下に隠し、かくておれは
二流貴族として生き抜く覚悟
その仁王像だけが、国家というオモチャを嗤っている
来たれ、運命よ! プルーストのささやきよ!
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(写真は運慶作とされる仁王像@常寂光寺(京都嵯峨野))
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