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『昭和天皇(上)』──昭和天皇には戦争停止の決定権があった。(★★★★★) [歴史]

『昭和天皇(上) 』(ハーバート・ビックス 著、 吉田 裕 訳、2002年7月31日、講談社刊)

 

実質的な天皇制は、持統天皇が藤原京を作り、律令制を始めたことから始まった。しかし平安時代には、それは形骸化していく。そして鎌倉から江戸時代まで、幕府=武士の政権となる。これを、ふたたび「天皇制」として「利用」したのが、明治政権である。意外なことに、「天皇制」という言葉がはじめて公で言われたのは、1930年代の世界共産党の大会のコミンテルンの時だという。

 そのような「基礎」のもとに本書を読み解けば、近代的視点からの「昭和天皇」なるものが見えてくる。戦後の、穏和の姿は、「そうか、軍部やアメリカに操られていただけなんだ」と信じる人々は多い。しかし、手に入るかぎりの資料を分析して結論を下した本書によれば、昭和天皇は、幼少時から、「独裁者としての教育」を受け、民は自分のための死んで当然と信じ込んでいた。そして、太平洋戦争全体の決定権を持ち、敗戦が目に見えている時にも、「止める」ということを「言わなかった」。そのため、日本とアジアの多くの命が無駄に消えた。

 本書は、右翼、あるいは、心情右翼(表面はリベラルでありながら、天皇は「いい人だった」と信じる人々を含める)には、否定的な人々がかなりいる。それらの人々は、欧米のジャーナリズムさえ疑っている。まあ、そういう人々は、日本の「良心的なジャーナリズム」を妄想しておればよいでしょうが。

 ちなみに、昭和天皇は、7歳から日記を書いていたと言われるが、それは、宮内庁編纂『実録昭和天皇』には、まったく出て来ない。上記の本は、「宮内庁が記した日録」にすぎない。



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