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【詩】「白いドレスの女」 [詩]

「白いドレスの女」

 

ヒート、ヒート、

「アイスティーのL二坯」

そう言って、金髪が薄くなってはいるが長身でハンサムな男はカフェのカウンターに向かってさもめんどくさそうに言った。

二坯とも自分が飲むのである。こんな暑さでは最初から、二坯と決まっている──。

1980年代、カリフォルニア。

悪徳弁護士であった。依頼人があった。

「夫を殺して保険金を騙し取ろうとおもうんだけど、お力になっていただけるかしら?」

すでにその女との性交を想像していた。こんなに暑いのに? そう。

ふたりで水風呂に入ってな。それでも水はぬるいでしょう? いや。

氷を入れるから大丈夫さ。気づいた時には、めくるめくような快感の思い出は、溶けた氷よりも存在感をなくして、読みかけのマーク・テイラー「さまよう」。

もっと悪い弁護士がいてな。さあて、三十年も経った私の脳裡には、その女の白いドレス、そして、二坯のLサイズのアイスティー。だけ。

その映画の原題は、

『Body Heat』

ヒート、ヒート、

ウィルキー・コリンズのいちばんの傑作と言われる、

『白衣の女』(『The Woman in White』)とはちがう作品。

ヒート、ヒート、

そう、男は絞首台の前でちらと思ったかもしれない。

「はめられた」──

 


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