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【詩】「定家」 [詩]

「定家」

 

Chante, déesse, la colère d'Achille, le fils  de Pélée ; détestable colère, qui aux Achéens  valut des souffrrances sans nombre et jeta en pâture à Hadès tant d'âme fières de héros, tandis que de ces héros mêmes elle faisait la proie des chiens et de tous les oiseaux du ciel ___pour l'achèvement du dessein de Zeus. Pars du jour où une querelle tout d'abord divisa le fils d'Atrée, protecteur de son peuple, et le divin Achille.*

 

歌ってくれ、女神よ、アキレウスの怒りを、ペレウスの息子の、どうしようもない怒りを、アテネにて、永遠に匹敵する苦しみ、ハデスへの糧として投げ与えた、誇り高き英雄の魂を、これらの英雄たち自身を、犬や空のすべての鳥たちの餌食として与えた──ゼウスの計画を完成させるために。まずはある諍いの日から歌い始めよ、アトレウスの息子、人民の庇護者(アガメムノン)と神々しいアキレウスとを分かった諍いの日から。

 

マラルメの牧歌、ヴァレリーの海、アポリネールの領域、ヴェルレーヌの墓碑銘、ランボーの声、ミショーのペン先、ボードレールの散文……すべてすべて、おフランス的なものを歌いたまえ。そして、浪花節や歌謡曲を嗤いたまえ。三波春夫や都はるみを、法善寺横丁で願かけながら、嗤いたまえ。葡萄酒色の海をゆく、ホメロスよ、赤穂浪士に助っ人すべきかどうか迷っている俵星玄蕃に声かけたまえ。

 

4260首の歌の森をわれはゆく。青白き頬を晒し。われはゆく。戦乱の海を。こまとめて、こまとめて、こまとめて。ばにくやのぞくかげもなし。佐野のわたりの雪の夕暮。

 

アキレウス。ただひとり、死すべき運命の男。ホメロスは、その運命の輝かしさを歌う。死すべき運命の美しさを。

 

さて、おれはなにを歌うか。今日も律儀に書き留める、貴族生活の無風の、無意味の、無残さを歌うか。それとも、のちの世まで生き残る、詩というものを。

 

「今日からは赤い爪をあなたに見せない」

「ベアトリーチェ、まだねんねかい?」

「そうよ、私は蠍座の女、お気のすむまで嗤うがいいわ」

 

つねならぬ世はうき物といひいひてげにかなしきを今やしるらん

 

*****

*"HOMERE" IIiade Chants a Ⅷ(Les Belles Lettres 1998

Special thanks to Kurage for the picture.

 

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