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『ボヘミアン・ラプソディ』──ラミ・マレクはアカデミー賞を取れるか?(★★★★★) [映画レビュー]

『ボヘミアン・ラプソディ』(ブライアン・シンガー監督、

 2018年、原題『BOHEMIAN RHAPSODY』)

 

 イギリス社会というのは、容易に移民を受け容れてくれるけれど一歩奥へ踏み込むと、異人種に対して徹底して扉を閉ざしていると、長年イギリスに住んでいる外国人が言っていると、佐藤優の著作にあった。

 本作のキモは、「パキ」(この言葉は、ダニエル・デイ・リュイス主演の『マイ・レフト・フッド』で初めて聴いたが、と差別的に呼ばれる、イギリスに住むパキスタン人の、しかも、日本でいう、出っ歯(?)の男が、ロックグループのボーカルとして、世界的に成功し、最後はエイズで死んでいくまでを描いている。そのロックグループは、インテリ揃いで、音楽の作り方も前衛的である。その前衛が、いかに、大衆の心をつかんでいくかを、ことさら重点的に描いている。さすが、『ユージュアル・サスペクツ』のブライアン・シンガーである。

 私は「クィーン」なるグループの名前ぐらいは聞いたことがあったが、なんら関心はなかったが、予告篇が非凡であったのと、フランス『プレミア』誌(ネット版)で、クィーンのギタリスト、ブライアン・メイが、カリスマ的ボーカルのフレディ・マーキュリーを演じた俳優、ラミ・マレクを、アカデミー賞に値する、フレディそのものだと賞讃していると報じていたので観る気になった。

 この「怪優」、実際はアメリカはカリフォルニア生まれの白人で、出っ歯でもないのかもしれないが、「なりきり」では、ダニエル・デイ・リュイスを超えているとも思える。まさに、大衆の心を惹きつける真の芸術とは、オペラやシェークスピアなどを取り込み、それらを超えて、オリジナルなものを創造していくことにある。当時はシンセサイザー音楽も華やかなりし頃であったが、徹底したアンチ・シンセサイザーも、音楽としても深さを感じさせる。すでに絶大な人気であったのかもしれないが、今こそ音楽的に、再評価されるべきであろう。本作は、その成り立ちと価値を十分に描き得た。恋愛や恋人(男女とも)とのエピソードなど、本作の本意ではないだろう。やはりこれだけのものを描くのには、9年という月日が要った。

 


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