SSブログ

『ファースト・マン』──レトロ感漂う魂の映画にIMAXはいらない(★★★★★) [映画レビュー]

『ファースト・マン』(デイミアン・チャゼル監督、2018年、原題『FIRST MAN』)

 

 ひとはなんのために、宇宙開発をするのか? 虫の眼で見れば、覇権争いのためだろうか。ひとはいつから、いま自分が生活している場所から、空の方へ行って見ようと思ったのか? いちばん身近な天体としては月があり、太陽よりも、簡単に行けそうである。アインシュタインが宇宙のあり方についての理論を創り上げ、ホーキングがそれをさらに進化させた。しかし、それらは、あくまで理論だ。いま、AIの存在があたりまえになり、なんでもコンピューターで制御できる時代から見ると、デジタルではなかった時代、つまりは十分なコンピューターがなかった時代に宇宙ロケットを作り、それを月に飛ばすなど、狂気の沙汰に見える。ゆえに宇宙飛行士には、高い知性が必要とされた。ただ体格がいい、運動神経が優れているだけではだめなのである。自らも、技術を持って、「計算」しなければならない。ちなみに、言っておけば、AIとは、プログラミングからなっており、人間対ロボット、ではなく、プログラミングできない人間と、プログラミングできる人間に分かれていくのが未来の図だと、識者たちは言っている。さらに時代が進めば、そんなこともばからしいようになっていくだろう。したがって、60年代が科学的に劣った時代だとも言えない。「科学とは方法論にすぎない」と小林秀雄も言っている。

 ゴダールも知らないバカが、画面が揺れる、ぶれる、アップが多いとほざいていたが、この手法は、ゴダールがそれこそ何十年も前から使っていた手法である。おそらく手持ちカメラか、あるいはそれを意識した方法で撮られていると思われる。アナログの時代のアナログ感を、カメラも必死にまとおうとしている。訓練施設のリアルなチャチさ、宇宙船内部から見える視界、などなど。そして宇宙服を着たライアン・ゴズリングのヘルメット越しの表情。ほとんど目元のみ。

 愛娘を失ったニール・アームストロングが、数々の試練を乗り越え、まるで娘に導かれるようにして、月の地を踏む「ファーストマン」となる。それは、彼の魂の物語であり、それをよく映像化しえていたと、まずは、われわれも、讃えるべきではないか?

 IMAXのために作られたと、Yahoo!映画の批評家氏は書かれていたが、私も、『ブレードランナー2049』などは、IMAXで観て堪能したが、手持ちカメラ風のレトロ感漂う魂の映画にIMAXはいらない。



 


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。