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『ベン・イズ・バック』──トップを走る女優の最高峰(★★★★★) [映画レビュー]

『ベン・イズ・バック』(ピーター・ヘッジズ監督、2018年、原題『BEN IS BACK』)


 


 のっけから、ジュリア・ロバーツの演じる女は、「リベラル」であることを知らされる。というのも、ジュリアには、「黒人」の幼い男女の子どもがおり、養子なのかなと思っているとそうではなく、今の夫との間の子どもなのである。この一見黒人の子どもたちは、ハーフなのだろうが、「黒人色」が強い。再婚の夫は、黒人で、りっぱな紳士である。ジュリアには、19歳の息子と、その妹の、二人の「白人」の連れ子がいて、彼らの父は白人と知れるが、彼らは、まっとうな黒人の父に愛情を抱いている。そしてその父は、裕福で、理解も愛もある。そういう一家の息子は、ワルとは縁遠いだろうが、ケガの治療のために使われた鎮痛剤(名前はいろいろだが、麻薬性のものなのだろう)で、中毒になってしまう。完全に医療ミスなのである。しかし、中毒には変わりなく、息子がいかに、「墜ちて」いったかが、少しずつ、関わり合う人間たちによって知らされる。


 クリスマスの日、息子は更生施設を抜けだしてくる。良識派の夫と娘は不審感を抱くが、ジュリアは心から歓迎する。しかし、夫と話し合った末、施設に戻そうとするも、一日だけ、ジュリアの監視を離れないという条件で、息子は家に留まることを許され、一家はいっしょにクリスマスイブの日を過ごす。夜教会から一家が帰ってみると、自宅が荒らされ、飼い犬がいなくなっている──。


 ここから、ごく普通の、といってはおかしいが、悪い仲間との戦いが始まる。それは、どれでも似たようなケースで、更生しようとしている人間にまとわりつき、彼を愛する者をも巻き込む。そこで、ジュリアの活躍である。ど根性の母親といっても、誰にでもできる役ではない。ジュリアだからできる役なのである。そう、あの、ごくフツーというより、やや下流の子持ち女が、水質汚染を暴く、『エリン・ブロコビッチ』を思い出す。ジュリア・ロバーツは、それほど学歴のある役はやったことがないような気がする。しかし、いつも、世界を変えて見せる。普通の主婦であり、母親が、堂々、ヤクの組織と戦うのは、胸がすく。ジュリアはそういう役をやってきた。群を抜く演技力と美貌で、女優のトップを走ってきた。その彼女が、「キャリアの最高峰」と言われる役を演じた。そういう、作品である。


 


 


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