【詩】「惑星の名前できみを呼ぼう」 [詩]
「惑星の名前できみを呼ぼう」
今では
雨が降っても
簑を着るひとはいない。
湿った藁の感触を
思い出すひとはいない。
宇宙最速の
光さえも出られない
穴
かすかに
きみの寝息が聞こえる
きみの出自
きみの記憶
きみの知識
きみの教養
のなかに、
湿った藁はあって
ロシアより愛をこめて
きみは私あてに
手紙ではなく
ひとを介して伝言する
その男に、きみはこういうはずだ
伝えてくれ彼女に
「ロシアより愛をこめて」と。
その男は苦笑いもせず
小さくうなずく
帰ったら
そう妻に伝えるよ
湿った藁を共有する私たち
愛なんて湿った……
湿った?
私は人混みを歩きながら
きみの寝息を思い出している
光さえも出られない?
けれどぼくたちの
愛は出られる
激しく泣く代わりに
惑星の名前できみを呼ぼう
2019-08-16 05:04
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