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『アド・アストラ 』──最高に美しいブラピとまったく新しい映画(★★★★★) [映画レビュー]

『アド・アストラ』(ジェームズ・グレイ監督、2019年、原題『AD ASTRA』)
 本作は、キューブリックの『2001年宇宙の旅』を見てない人、ホメロスの『オデュッセイア』を読んでない人、また、テオ・アンゲロプロスの『ユリシーズの瞳』を見ていない人、スピルバーグの『未知との遭遇』を見ていない人、には、なんのことかわからない。そして、宇宙モノ、ということで、勝手な期待をして、それが裏切られたと怒りまくる……そういう観客は、進化前の類人猿にさも似たり(笑)。そういう観客は「見るなよ!」という意味で、わざわざ、題名を、ラテン語にしてある。訳してみれば、「宇宙へ」ですかね。そして、そういう映画を、ブラッド・ピットは作りたかった。制作側は「ブラピを無駄遣い」っていう、無知丸出しのレビューがあったが、ブラピが制作なんですっ!
 ここには、最高に美しいブラピが、最高に繊細な演技をし、かつ、見たこともない世界、視点が映像化されている。これぞ、映画を見る意味なのである。
 冒頭宇宙服姿のブラピが宇宙船に乗り込もうとするが、「サージ」が起こり、悲惨な事故を見せつける。コロンビア号の事故ではないが、発射台などがぶっ壊れ、ブラピを含む宇宙飛行士たちが投げ出されたりして死亡するが、ブラピは機転によって辛くも生き延びる。
 「サージ」とは? 私が解釈するに、異常な重力波ではないかと思われる。それが、太陽系の彼方から来ていることがわかる。そこには、人類の存在する気配がある。というのも、「サージ」は、人工的に起こされた核爆発などを起因とするからである。そしてその位置は……海王星の付近……ちょうどロイ(ブラピ)の父が行方を絶った位置である。ブラピの父は、優秀な宇宙学者であったが、地球外生命探索に乗り出し、それに熱中し、太陽系の彼方、海王星あたりに消えて、十数年経ち、死んだものと思われていた──。
 しかし、「サージ」が起こったことで生きているかもしれないということになり、息子のブラピが探索へと、政府から任命される。
 タルコフスキーの『惑星ソラリス』をも彷彿とさせる、内面の語りと、見たこともないような月と太陽系の惑星の風景、それらのほとんどは、住めるようになっている。ヘルメットをかぶったブラピの顔が何度も映し出され、観客はヘルメット越しに彼の顔を見ることになるのだが、その表情は、美しく繊細で、涙をひとすじ流すが、無重力下では、粒となって飛ぶところを、スッとほほを伝うような「非科学」をわざと選択している。
 結局、物語は、ブラピの心の成長……のようなものに収束していく。非科学的と、非難しているレビュアーもいたが、こういう一般人に指摘されるまでもないだろう。それは百も承知のうえであり、だいたい、科学は、一種のイデオロギーにすぎないのである。そのあたりを、五十を過ぎていまだに、整形することなく、自然な美しさを保っているブラッド・ピットが、入魂の演技をする、美しいだけではなく、志も高い。




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