SSブログ

『レッド・スパロー 』──ヤンキー娘が英語で演じる性差別丸出しロシア女スパイ映画(★) [映画レビュー]

『レッド・スパロー 』(フランシス・ローレンス監督、2018年、原題『RED SPARROW』)

 

 スパイ映画が三度のメシよりすきな私であるが、本作は予告篇から食指が動かなかった。なんとなく、重そう、そして、「二重スパイ」は、あの人に決まってる(笑)。あけてビックリ、あまりにも紋切り型かつお手軽な(一応)スパイもの。ツッコミどころが、満載のスキだらけのスパイもの(爆)。だいたい、なんで、ヤンキー娘が「英語で」ロシアのバレリーナを演じなきゃいけないわけ? 『世界にひとつのプレイブック』で、弱冠21歳で、アカデミー主演女優賞をはじめ、数々の賞を総なめし、つづく『アメリカン・サイコ』でも評価されたジェニファー・ローレンスは、16歳だかで出た『ウィンターボーン』でアカデミー主演賞にノミネートされたが、幼すぎて受賞にいたらず、「おとなになってからの」『プレイブック』で晴れて受賞となったが、彼女の演技史的には、『ウィンターボーン』が最高で、あとはその余力にすぎない。その『ウィンターボーン』の柳の下のドジョウを狙った、『ハンガーゲーム』シリーズで、ずっとコンビを組んでいるオーストリアの監督(同じローレンス姓なので、親戚かなにか(笑)?)が、次は何かないかと考えたのが本作であろうと思われる。美貌のバレリーナ、いいねー。しかもロシアのスパイ、いいねー。であるが、もともと丸顔で、いつまでも童顔のジェニファーなので、はっきりいって濃い化粧が似合わず、それほど美貌に見えなかった。ペチャぱいだし(爆)。背は高いかしらないが、ただ大柄なだけで、それほど色気もないタイプ。イメージチェンジを意図したのか? とにかく、このスパイものは、いかんわあ。第一、ロシア人がずーっと英語というのは、確かに昔はそういう雑な映画があったが、いまでは許されない。どっちがCIAかわからない(笑)。

 

 第二に、お色気作戦であるが、いま、こういう手法を謳歌するような映画は、性差別丸出し映画として、アクティヴィストのジェニファーなら拒否すべきだった。しかし、そのあたりが、甘いというか、やはり学校はちゃんと出ておくべきではなかったのか。同じバレリーナでも、何十年も訓練しているナタリー・ポートマンが、さらに特訓して挑んだ『ブラックスワン』とは大違い。だてにハーバードを出てるわけではないのかも。さらに、やはりバレリーナを目指していたシャーリーズ・セロンの体の方が数倍美しいと思うが、彼女が去年出たスパイもの『アトミック・ブロンド』では、色はいっさい売らない。すべて、格闘技で大男の敵をばっさばっさやっつけていく。スパイものではないが、最近の『トゥームレーダー/ファーストミッション』のアリシア・ヴィキャンデルも、鍛え抜いた体はすがすがしく、ランニングいっちょうで、アクションばんばん。本作、いかに原作が、33年間CIAにいた人間が書いたか知らないが、ロシアのスパイ養成学校の科目に、「フェラチオ(←Yahoo!映画では、この言葉が「使用できない文字」でした(爆)。しかたないので、伏せ字にしました。どんなPTAが運営してるんだ(爆)?)のおけいこ」まであったのは、わろたー(爆)。

 

 第三に、伏線がほとんどなしで、すべてセリフで説明のひどい脚本。上層部ぶった雰囲気のジェレミー・アイアンズがいきなりジェニファーの前に登場し(数回顔を合わせてはいたが)、「私がモグラ(二重スパイダ)だ。国家に不満があった」てなことを告白する。え? 意外! とは、全然思わなかった(笑)。もうこの配役は、これしかないだろー。ロシア情報部の幹部の告白くらい、ロシア語でやってほしかった〜。

 

 第四に、やはり、スパイ映画につきものの、拷問(笑)が、なま易しい。『ソルト』(この二重スパイの方がかなり意表を突いた)のアンジェリーナ・ジョリーなど、北朝鮮で捕まって、顔が本人と見分けがつかないほど拷問されたシーンがある。化粧でちょいちょい、目のしたのアザを直してる程度では(このシーンが数回出てくるが)、甘い甘い(笑)。

 

 で、なんつーか、「絶賛」が多いが、このテードの映画で誤魔化されてしまう観客のレベルの低下を本気で憂える。 おそらく、ジェニファー・ローレンスは、こののち、映画俳優的ステイタスは確実に落ちていくものと思われる。だいたい、このバレリーナ役、ほんとうにバレエに惚れ込んでいたのが、それが絶たれて失意、という状況だが、それほどまでにバレエがすきなようには、全然見えなかったのも、この映画の大きな欠点のひとつだ。

 

 出演俳優としては、ごつい容貌とアクの強いジョエル・エガートンが、スリムになって、中村獅童(なにか襲名しましたかね?)よりは、許せる容貌になってCIAのあまりリアルでない局員で、お決まりのように、ヒロインと恋に落ちる役を地味に演じている。

 メアリー・ルイーズ・パーカーが、アメリカ側のお役人で情報を売るアル中女を、ひとりだけ楽しんで演じていたのが特筆に値する(笑)。


 

 


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。