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【詩】「記憶の朽ちた船を探して、あるいは、成熟こそがすべてだ」 [詩]

「記憶の朽ちた船を探して、あるいは、成熟こそがすべてだ」


 


私はいまだ登録されてない星が宇宙の奥底で燃え尽き、愛を排出したのを見た。本質などというものは存在せず、そのつどの偶然の関係によって咲く花をよく見ると、それはただの炎にすぎず、さあ、行こうよ! だめだ。なぜ? ぼくたち、ゴドーを待たなければ。あ、そうだった。といって、動こうとしないブラックホールにさも似て、輻射と書いているだけでしあわせを感じる。25世紀ともなれば、ポセイドンは、どんな魚に称号を与えようかと思案していて、金の羊のことなどまるで頭にない。ウェリギリウスはキリスト以前に生まれたので、地獄へ堕ちることも天国へ行くこともできず、ただ、素粒子の数を数えるしかない。それも対になっている非存在としての。
*O quanto è corto il dire, e come fico al mio concetto! (私が言おうとしていることに比べて、言葉は何と貧弱なものでしかないのだろう。)


 


* ダンテ『神曲』、「天国篇」第三十三歌より、TS・エリオットが引用し英訳したものを、吉田健一が和訳したもの。『エリオット全集4』「ダンテ」中央公論社、所収)




 


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