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『告白小説、その結末 』──メタ・フィクションの失敗作(★) [映画レビュー]

『告白小説、その結末』(2017年、ロマン・ポランスキー監督、原題『D'APRES UNE HISTOIRE VRAIE/BASED ON A TRUE STORY』)

 

 原作の題名は、直訳すれば、「事実に基づいて」(名詞ではない)であり、d'apresは、「〜基づく」である。それが終盤、Apres d une histoire vraie と置き換えられ、訳せば、「事実に基づいた作品ののち」。それが、作家デルフィーヌの「次回作」であり、そのサイン会でこの映画は終わる。

 つまりこの作は、作家のサイン会にはじまり、サイン会に終わり、その間の時間は、作家のスランプである。その間に登場するのが、エヴァ・グリーン扮する、愛読者にして、職業ゴーストライターにして……である。この女が、作家デルフィーヌに近づき、彼女を支配し、彼女になりかわって新作まで書いてしまう? つまり、この女は、おそらく、スランプに陥った作家の、もうひとりの自分であり、それはそのまま、「事実に基づいた」作品の「内容」であり、「その後」(第二作)なのである──ってことをポランスキーは言いたかったのか?

 

 だが本作はそういうメタ・フィクションが成功していない。まずは、エヴァ・グリーンが登場した時の顔に、「私はあなたが生んだ想像の産物」と書いてある(笑)。38歳のエヴァ・グリーンと、52歳のエマニュエル・セニエを比較して、美醜を言ってもしょうがない。グリーンは、完璧なフルメイク、一方、セニエはすっぴんに近いと思われる。それより、私には、『毛皮のヴィーナス』でどぎつい化粧で毒づいていたセニエが、おとなしい感じで出ていたのはちょっと驚いた。しかも、しゃべり方は、イザベル・ユペールを思わせる。年齢はユペール64歳? ほぼ(日本でいう)「ひとまわり」ずつ違う、この三人を出して、あれこれやらしたら面白かったかもしれない。しかし、ユペールは、ポランスキーの映画には出ないだろう。相変わらずセニエをイジるしかない(笑)。悪い女優ではない。しかも、ポランスキーにかなり鍛えられた感あり。

 

 この作品のかなめとなる存在、「エル」(彼女とも解釈できる。安易なネーミングではあるが(笑))を演じる、エヴァ・グリーンの顔がどうもすきになれない。美女かなんか知らんが、麻生太郎のように顔相が悪すぎる(爆)。だから、この作品は、彼女に配役した時点で大失敗の坂を真っ逆さまに落ちていくしかなかったのである。


 


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