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『タリーと私の秘密の時間 』──性を超える女優セロン(★★★★★) [映画レビュー]

『タリーと私の秘密の時間』(ジェイソン・ライトマン監督、

2018年、原題『TULLY』)

 

 最近の「ママ」といっても年代は幅広い。20代から40代まで、ざっと20年の開きがある。そのなかでも、比較的若年の層は、雑誌『Very』(実は自分も愛読しています(笑))に代表されるような、青春時代とそれほど変わらぬライフスタイルを、子育てにも持ち込んでいる。しかしそれは、おそらく雑誌が読者に描いて見せるイリュージョンだろう。本作の主人公マーロは、この「ママ」のなかでも高年齢、しかも、ほかに子どもが2人いて、弟の方は問題児。仕事も持っているなかでの(思わぬ)妊娠、出産。全世界の「ママ」の条件は100人100色だろう(いくら子だくさんでも、夫が金持ちなら条件も変わってくるはず)。フランスではもっと子持ちの状況は楽であるはず(国がタダでベビーシッターを手配してくれるので)。

 まあ、そんなこんなで、マーロという女性は、生活に疲れ切っている。そこに若いベビーシッターが現れ、なんでもこなしてくれて、親友にもなってくれる。あり得ないハナシである。そこんとこ、「秘密」とはいえ、ちょっと考えればすぐわかるはず。その若い女は金髪で、どことなく、マーロに似ている。決定的なのは、マーロと若いシッター、タリーが、発作的に飲みにでかけ、帰りに車が川に落ちる──そこでマーロは命拾いし、病院に夫がやってくる。受付にいろいろ聞かれる。「奥さんの旧姓は?」「タリー」。

 若きあの時、選んだ人生は、凡庸とも思える夫との平凡だけどおだやかな日々……。マーロはそれを実現していた──。ことに気づく。幸せの青い鳥は近くにいた……ってな物語はありきたりで、どこにでも転がっている。

 さて、それを体現するのが、ハリウッドきっての美貌を唱われるシャーリーズ・セロンである。2003年『モンスター』で、体重を10キロ増やして、ブスメイクで、女性初(ってなー(爆))の連続殺人犯を演じて、アカデミーとゴールデングローブの両女優賞を獲得。第一級の女優に上り詰めた。確かに本作、そのあたりの反復かなとも思われるが、とにかくセロンは、色を売らない。それは、『アトミック・ブロンド』(2017)で、女スパイでも、(色仕掛け作戦ではなく)男と互角に格闘する女を見ればわかるだろう。バレーで鍛えた、ただ大柄なだけでないしなやかな肉体を、自在に太らせ、「リアルな肉体」を実現する。本作、同じ話でも、貧弱な肉体の女優が演じたら、悲惨そのものだけが強調された映画になったであろう。

 ま、女8人が厚化粧で挑む犯罪モノとは一線を画した、すっぴんでもデブでも、なんでも来い!のど根性は俳優の鑑である。



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