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【詩】「何かいいことないか子猫チャン(What's new pussycat?)」 [詩]

「何かいいことないか子猫チャン(What's new pussycat?)」

 

壇之浦を鉄橋から見たことがある。青緑の水がいくつも渦を巻いていた。こんな渦に巻き込まれたら、二度と水中から頭を出すことは難しいだろう……と思った。そう、あんとくちゃんは、祖母に抱かれ、たった満六しゃいで、その壇之浦に沈んでいったんだ。さぞかし怖かったことだろう。さぞかし苦しかったことだろう。そんなことがあったとも知らないぼくは、22しゃいの文学青年で、歌をつくるのに夢中になっていた──。その、

数ヶ月後から、

亡霊が出るとのウワサがたった。霊を鎮めるために、神社が

建立された。その名を、今では赤間神社という。

怨霊というのは、生きている人間に取り憑いて、いろいろ、災いをもたらす。それは仏教の思想ではない。それは、中国の宗教、『荘子』、『春秋左氏伝』、『墨子』に見える。鎮魂は、『雲笈七籤』『後漢書』……

私はこの間、日記を書かず、九条兼実が書いていた。元暦二年(1185年)324日、平家一門は壇之浦に消えた──。

そんな物語を琵琶法師が語る。すべて暗記している。そう、まるで、オデュッセウスの物語をそらで語るホメロスのよう。あれも、海の物語だった。魔女に呪いをかけられ、トロイアの帰り道、十年漂流するのだった。一方、『イリアス』の物語では、アイネイアスは、戦火のトロイアを逃れ、イタリアを目指す。ローマを建国するために。ひとりの美女のためというよりは、物資や奴隷を得るための戦争だったが、多くの命が失われたにもかかわらず、ここには怨霊はない。いや、いる。むしろこちらの思想が、中国へ伝わったか。海の潮のように、思想はめぐる。

 

世中はたゞかげやどす真澄鏡(ますかゞみ)見るをありともたのむべきかは

 

何かいいことないか子猫チャン

What's new pussycat?

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