【詩】「ベン・ジョンソンにささげる滅亡」 [詩]
「ベン・ジョンソンにささげる滅亡」
よごと
枕もとに現れるのは、父俊成の亡霊ではなく、T・S・エリオットの亡霊──。
彼が、言うには、ベン・ジョンソンをわかるには知性がいる。彼の詩は表面的な言葉の暗喩のようなもので成り立っているわけではないんだ。知的な分析をほどこさねばならないんだよ──。
だけど、トーマス
そんなこと言われても、それって、あなたの国の、もっと正確に言えば、あなたが帰化された国の、詩人でしょ?
ぼくは英語で答えていた。それはともかく、私の父俊成は、およそ27人の子どもがあった、そしてぼくも、およそ27人の子どもを作った。
およそ、というのは、わけのわからない「交渉」もあるからさ、ほら、当時は。
当時はって、ぼくはいったいどの時代にいるんだろ?
テクストのように時間が錯綜して、ブラックホールのように、空間はつかみどころがない。ぼくがとまどっていると、トーマスはさらに追い打ちをかけるように耳元でささやく、
解読する困難が、筋運動のように「詩」を育てる
テクストの迷路こそ、きみが存在のようなものと出会うところ
ああ、滅亡は甘い
カクテルのようなもの
口うつしでささげよう
ベン・ジョンソンに
Still to be neat, still to be drest' *
(いつも礼儀正しく、いつもちゃんとした服を着て)
それは
古い、ある一族の物語で、最後は水没
あなたの好みだ
Still to be neat, still to be drest'
せりつみし沢べのほたるおのれ又あらはにもゆとたれに見す覧(らん)
人の身も恋にはかへつ夏虫のあらはに燃ゆと見えぬばかりぞ 和泉式部
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* Ben Jonson (1572 - 1637)の喜劇 "Epicoene, or The Silent Woman" より