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【詩】「Aujourd'hui maman est morte.」 [詩]

Aujourd'hui maman est morte.

 

その

うすい小説を閉じれば

脳裡に残る言葉は意外にも

北アフリカの都市の名前

明るい太陽

何発かの

銃声

Camus自身が

淡々と

読む

声を聞けば

私はいつしか

郷島にいて

天竜川の支流の

深い渓谷の

底に

いて

禿鷹の

死骸を

横目に

干上がった川底の

乾いた砂が

ささやく

Aujourd'hui maman est morte.

Ou

peut-être

hier.

(今日ママンが死んだ。

あるいは

昨日

だった

か。)

 



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【詩】「シェークスピアから一行引くなら」 [詩]

「シェークスピアから一行引くなら」

 

フランス人なのに

ラフォルグは

シェークスピアに

どっぷりつかっているようだ

そう

私がもし

シェークスピアから一行引くなら

戯曲ではなく

ソネット18番の

「君を夏の一日に喩えようか。」*

Shall I compare thee to a summer's day?

街角の広告にも印刷された

有名な文句だ

ジュール(ラフォルグ)

きみは不幸そうで

いつも冬のなかにいる

そう

Shall I compare thee to a summer's day?

きみを夏の一日にたとえようか?

 

 

*****

 

*吉田健一訳より(訳詩集『葡萄酒の色』(岩波文庫所収)




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『THE GUILTY/ギルティ 』──低予算、ワンカットでここまでできる(★★★★★) [映画レビュー]

『THE GUILTY/ギルティ』(グスタフ・モーラー 監督、2018年、原題『DEN SKYLDIGE/THE GUILTY』)

監督グスタフ・モーラー

 

 ワンカットのみの映画。警察の緊急電話のオペレーターは、かかってきた電話の内容を判断して、警察の各部署に切り分けるのが仕事。刑事物にはしょっちゅう出てくるが、まさかそのオペレーターが主人公で、ほとんど出ずっぱりだとは……。そんな映画はこれまでなかった、というか、彼の表情のみがドラマを作っていく映画は。

 普通日本で、低予算というと、『カメラを止めるな』のような、いかにも手作り風をもとにまんま作ってしまうが、本作は、考えてみれば、『カメラを止めるな』より経費ははるかにかかっていないだろうな、と思うが、まったくそのことを感じさせない。ひたすらひとりの俳優の言葉と表情でミステリーを構築していく。そして、展開は、存外ミステリーの常套を踏んでいるのである。それゆえ、恐怖感も猟奇的なところもない。

 主人公のオペレーターは、つい最近までは現場の警察官だったことがわかる。ある「失態」によって、現場から離されて、オペレーターの仕事をしている。

 物語の中心となる緊急電話がいきなりかかってくるのではなく、いくつかの、よくある事故で救急車などを呼びたいという電話を受け、さばいているうちに、その電話はかかってくる。緊迫した女の声。まずは、オペレーターが気をきかして、相手に、イエスかノーかで答えさせる。

 「誘拐されている?」「イエス」。そして実働班が「現場」を探し、かつ、白いワゴンを追う。いまは、GPSなどのおかげで、ある程度特定できるが、高速を降りられてしまうと、これまた迷路に入ってしまう。なんとかケイタイで電話をかけてきた女性の命が危ない……。オペレーターの指示で、彼女は自宅の子ども気づかって電話しているふりを装い、オペレーターからの指示を受け続ける──。

 ささやかながら、「二人」の人生が交わる。彼女の自宅で一人でいる六歳の少女をも気づかって、そちらにも指示を与えるオペレーター。少女がいうには、赤ん坊の弟、オリバーもいっしょらしい。

 デンマークの有名な俳優かもしれないが、ハリウッドの俳優のような華はない。どこといって特徴のない中年男。

 題名の「ギルティ」とは、女性を拉致している元夫、女性がしでかした事実、そして、オペレーターの関わった事件における彼の立場をも示している。結局、その「事件」に関わることによって、オペレーターは、女性と彼女の元夫を救い、自分は罪を告白する──。

 

 そのハリウッドでは、リメイクが決まっていて、ジェイク・ギレンホールがオペレーターを演じるらしい。……まったく違う映画になってしまいそうだが(笑)、期待はたかまる。

 

 


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【詩】「やーめて、そのショパン(松任谷由実ではなく、あいかわらず、デーモン小暮が歌う)」 [詩]

「やーめて、そのショパン(松任谷由実ではなく、あいかわらず、デーモン小暮が歌う)」

 

雨音は

蕎麦の実の殻を取り除く

調べ

どーやってやるのかというと、

筵の中央に人が立ち、

両端を持ち、

その筵部分に

べつの人が蕎麦の実を放り投げ

真ん中に立ったひとが

筵を「煽る」のである

客のない

冬の宿場

こんなふうに、

蕎麦の脱穀を

土間で

していたのだ

それを

なんとなく

見ている

 

 筵ふまへて蕎麦あふつみゆ  松芳(名残表八)

 

俳語、「あふつ」

つまり、あおる。

 

とおく、雨は、時間を閉じ込め

もはや、その宿は

誰の記憶にも

留めない

 

やーめて、そのショパン

うーうーうー。

 

曠野集、員外は歌仙なり

山口素堂の美学なり

 

 

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「デーモン小暮カヴァー『Never』、あるいは、廣野」 [詩]

「デーモン小暮カヴァー『Never』、あるいは、廣野」

 

傷つき壊れた時が

強く「なる」チャンス「だから」

ココロを閉ざさない「で」

くりかえし「ドア」

叩いて

さあ ねばぬばねばねば

IF」愛さなければ

ねばねばねばねば FLY

実は親孝行だという

白塗り悪の大魔王デーモン小暮

GIRLS'ROCKを歌う

HAKURAI

よいナ

かういふ悪魔が

ガールを鼓舞するロックを

歌ってくれるのワね

You can brew ?

このbrewbrow

聞こえるガナ

 

雲雀たつあら野におふる姫ゆりのなににつくともなき心かな  西行

 

芭蕉七部集『あら野』上下は、発句集、員外は連句集なり。

 

『冬の日』『春の日』の華美優美空想から逃れ、荒野へ

傷つき壊れた時が

強くなる

チャンスだから

 

だから、聖ヒエロニムスも

荒野へ!

石で身体を打ったって……あの

宗派?

『ダ・ヴィンチ・コード』の

 

下ゝの下(げげのげ)の客といはれん花の宿  越人

 

それは「なかなか帰らない客」のことで、

花のなかだもんね、

ということになる

 

月花もなくて酒のむひとり哉  芭蕉

 

花なんていらん月なんていらん

ねばねばねばねば

強くなる

チャンスだから

 

You can fly!



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【詩】「そして世界は泥である」(E fango è il mondo) [詩]

「そして世界は泥である」(E fango è il mondo

 

鉛色の空を

斜め上方から

降りてくる

禿鷹

鉱山の任地のゲーテと

重なる

人妻に恋していた

そして

その旅の詩を

もじった

ベケット

とも

しかし彼は

誰も

恋してなかった

詩人の

二重写し

 

けふ

ふじわら

みちなが

 

 

式部その庭で女郎花裏返し弟の袴穿いて馬でかっ飛ばす御所越え平成越え当時官房長官のオブチ越え眉入れ墨娘のユカ越え口をきく馬に乗り閉塞の平安時代も突き破っていく白いプジョーのtaxiとすれ違い警察は大急ぎだが追いつけぬいつもけつも恋人の赤い痰つば見飽きて出て行くベケットどこへどこへどこへヴィルヌーブが2020年に発表するDune楽しみだなスティングが出たけど今度はきみの名前でぼくを呼んでの少年役のティモシー・シャラメ主役いいないいないかにも新しい未来砂の惑星C言語でプログラミングのお勉強しなくっちゃiPhoneのアプリでも作ってやるかどうせヒマだしだしだし出汁はちゃんととって星否道長さま糖尿病で死去近代以前の権力者たちみんな栄養過多で死亡ナポレオンルイ14世しかり痛風とかプレスリー石原ゆうちゃんのメタボ症候群外国人はゆうちゃんなんて知らない石原軍団なんて軍団どんな軍隊? それゆけやれゆけBREXITのテレサ・メイ道なき道を突き進む離脱修正案可決でも出口なしやっさやれやれ小倉祇園鴎外橋渡って若戸大橋飛んでついでにロンドンブリッジそうそう応仁の乱はまだ承久の変もまだまだまだおいらのいなおいらんの心中事件もまだまだ近松門左衛門てなもんざえもん

 

レオパルディ

いま

19世紀

いて

ひとりぼっち

こどくの

せいかつ

苦く

たいくつ

生は

いがいの

なにものでもなく

そして

世界は

 

Amaro e noia

La vita, altro mai nulla ;

E fango è il mondo.

 



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『女王陛下のお気に入り』──ギリシア人監督に複雑な英国史は無理だった(笑)(★) [映画レビュー]

『女王陛下のお気に入り 』(ヨルゴス・ランティモス監督、2018年、原題『THE FAVOURITE』)

 


 現代の物語でギリシア悲劇の構図を描いてみせた同監督の前作『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』 (2017)は、なかなか面白かったし、まあ、予告篇もそれなり「おもしろそう」(実はこの予告篇は映画のおもしろ部分の「すべて」だった!(爆))だったので、観ることにした。


 開けてビックリ玉手箱(笑)。えーーー? 『大奥』(って言ってる人はレビュアーの中にもいた)だって、将軍の閨房生活をメインに語りながら、徳川幕府なるものの構造を全体としては見せていたのに、この映画はどう? 女の三人の肉体関係「だけ」で、まるでイギリス政治が動いていたかのよう。


 スコットランド人(!)のジェイムズ7世の「2番目」の娘、アンが、イングランドの女王となった時代、スコットランドとイングランドの「合同」問題(今日まで尾を引く)が背景にあり、かてて、フランスとイングランドの戦争(主に海戦だから費用がかかる)、かててオランダからの資金流入、多量のイングランド国債の発行、地方地主への重税、その重税によって国家を支えていく「財政軍事国家」。こうした複雑な政治世界が、女の三人の「レズ合戦」で動いていると信じるアタマの方々が結構いて、私は心底怖くなりました(爆)。


 まあ、本作の「長所」といえば、宮廷がそれなりリアルさをもって描かれていたことでしょうか。とくに、細長いホール。これは、廊下でもあり、パーティー用にこうなっているんでしょうか。ヴェルサイユ宮殿に行ったときのことを思い出しました。あの時代の「宮殿」は、だいたいあんな設計なのかな〜?てなことぐらいですかね。お庭で排尿、排便は、トイレのなかった時代には、ヴェルサイユ宮殿とて同じこと。それにつけても、アン王女がブスで、女官と召使いが美女とは言えないでしょう。レイチェル・ワイズも、エマ・ストーンも、『バイス』のクリスチャン・ベールのように、体重を20キロ増やして、ノーメークなら、けっこうアン王女役もいける(爆)。


 ひゃー、悪いんですけど、ヨルゴス・ランティモス監督、イギリスの歴史を一から勉強してください。でないと、『聖なる鹿殺し』が、まぐれだったような気がしてしまいますから(笑)。


 あ、意味ありげなバロック音楽やカメラワークは、多少なりとも、グリーナウェイを意識してるんでしょうか? はるかに及ばないんですが。


 


 


 


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【詩】「鎮魂」 [詩]

「鎮魂」

 

T.S.エリオットは

フランスの詩人たちを

ゆるさなかった

ダンテを

ゆるしていた

それはだれもが

「わかる」詩を書いたから

つまり

キリスト教徒なら

誰でも

地獄があり

三途の川があり

死者たちがおのれの

懺悔を語る

私は、

犬だろうと

ひとの母だろうと

歴史にのこる人物だろうと

およそすべての

肉体をなくした

魂のために

詩を書く


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【詩】「はーこ」 [詩]

「はーこ」

 

はーこ、と

となりの大家のおじさんはいった

私の名前は
はるよ、なのに

はーこ、と

遠州のおじいちゃんの妹の

ぜいむしょのおばさんはいった

私の名前は
はるよ、なのに

遠州の人たちも
はーこ、と、いったのだった

「また、きないよ」

というのは、「また、おいで」という

遠州弁だった

はーこ、と
となりのおじさんはいって

釣ってきた「ぎま」を
庭でさばいてみせてくれた

私を「はーこ」と

呼ぶものはみんな

影のようになって

私を見守っているのだった


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【詩】「あの墓地」 [詩]

「あの墓地」

 

いちのみやの

おばあちゃんの家の

庭から
いつもみることのできた

黒い森

のなかの墓地へ

さいしょ

おじいちゃんが入り

つぎに

おばあちゃんが入り

ついに

あのときは
おじいちゃんのひつぎを

打ちつけていた

あさきにいちゃんまで

入ってしまった

そして

わたしはもはや
訪れることはない

けれど

美しい記憶には
ちがいない



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