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【詩】「鎮魂」 [詩]

「鎮魂」

 

T.S.エリオットは

フランスの詩人たちを

ゆるさなかった

ダンテを

ゆるしていた

それはだれもが

「わかる」詩を書いたから

つまり

キリスト教徒なら

誰でも

地獄があり

三途の川があり

死者たちがおのれの

懺悔を語る

私は、

犬だろうと

ひとの母だろうと

歴史にのこる人物だろうと

およそすべての

肉体をなくした

魂のために

詩を書く


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【詩】「はーこ」 [詩]

「はーこ」

 

はーこ、と

となりの大家のおじさんはいった

私の名前は
はるよ、なのに

はーこ、と

遠州のおじいちゃんの妹の

ぜいむしょのおばさんはいった

私の名前は
はるよ、なのに

遠州の人たちも
はーこ、と、いったのだった

「また、きないよ」

というのは、「また、おいで」という

遠州弁だった

はーこ、と
となりのおじさんはいって

釣ってきた「ぎま」を
庭でさばいてみせてくれた

私を「はーこ」と

呼ぶものはみんな

影のようになって

私を見守っているのだった


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【詩】「あの墓地」 [詩]

「あの墓地」

 

いちのみやの

おばあちゃんの家の

庭から
いつもみることのできた

黒い森

のなかの墓地へ

さいしょ

おじいちゃんが入り

つぎに

おばあちゃんが入り

ついに

あのときは
おじいちゃんのひつぎを

打ちつけていた

あさきにいちゃんまで

入ってしまった

そして

わたしはもはや
訪れることはない

けれど

美しい記憶には
ちがいない



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【詩】「だめなんだ」 [詩]

「だめなんだ」

 

だめなんだ

詩を書いたあといつも思う

それでもう忘れることにして

次の詩を書く

果たしてこれは詩なのか?

とも思う

けれど何かを書きとめたくて

書いてしまうと

心が満たされて

寝ようと思う

「あの薄い本をベルクソンは八年かけて

書いたんです」

小林秀雄のCDの声が聞こえてくる

だめだという迷路こそ

おそらく生き延びる

唯一の道

 

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【詩】「青空」 [詩]

「青空」

 

空は

青いもの

と思った

青という言葉も

知らなかった

母の背中で

母は

庭の洗濯台で

洗濯をしていた

 

あおい

粒子がわが幼年期を

満たし

母の背中で

母と一体となっていた

母のうなじが

宇宙だった

 

母が洗濯板に

石鹸を擦りつけると

真珠のような

泡が広がり

清潔な匂いが

宇宙を形成した

 

私は時間という

宝物を

得た



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