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『女王陛下のお気に入り』──ギリシア人監督に複雑な英国史は無理だった(笑)(★) [映画レビュー]

『女王陛下のお気に入り 』(ヨルゴス・ランティモス監督、2018年、原題『THE FAVOURITE』)

 


 現代の物語でギリシア悲劇の構図を描いてみせた同監督の前作『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』 (2017)は、なかなか面白かったし、まあ、予告篇もそれなり「おもしろそう」(実はこの予告篇は映画のおもしろ部分の「すべて」だった!(爆))だったので、観ることにした。


 開けてビックリ玉手箱(笑)。えーーー? 『大奥』(って言ってる人はレビュアーの中にもいた)だって、将軍の閨房生活をメインに語りながら、徳川幕府なるものの構造を全体としては見せていたのに、この映画はどう? 女の三人の肉体関係「だけ」で、まるでイギリス政治が動いていたかのよう。


 スコットランド人(!)のジェイムズ7世の「2番目」の娘、アンが、イングランドの女王となった時代、スコットランドとイングランドの「合同」問題(今日まで尾を引く)が背景にあり、かてて、フランスとイングランドの戦争(主に海戦だから費用がかかる)、かててオランダからの資金流入、多量のイングランド国債の発行、地方地主への重税、その重税によって国家を支えていく「財政軍事国家」。こうした複雑な政治世界が、女の三人の「レズ合戦」で動いていると信じるアタマの方々が結構いて、私は心底怖くなりました(爆)。


 まあ、本作の「長所」といえば、宮廷がそれなりリアルさをもって描かれていたことでしょうか。とくに、細長いホール。これは、廊下でもあり、パーティー用にこうなっているんでしょうか。ヴェルサイユ宮殿に行ったときのことを思い出しました。あの時代の「宮殿」は、だいたいあんな設計なのかな〜?てなことぐらいですかね。お庭で排尿、排便は、トイレのなかった時代には、ヴェルサイユ宮殿とて同じこと。それにつけても、アン王女がブスで、女官と召使いが美女とは言えないでしょう。レイチェル・ワイズも、エマ・ストーンも、『バイス』のクリスチャン・ベールのように、体重を20キロ増やして、ノーメークなら、けっこうアン王女役もいける(爆)。


 ひゃー、悪いんですけど、ヨルゴス・ランティモス監督、イギリスの歴史を一から勉強してください。でないと、『聖なる鹿殺し』が、まぐれだったような気がしてしまいますから(笑)。


 あ、意味ありげなバロック音楽やカメラワークは、多少なりとも、グリーナウェイを意識してるんでしょうか? はるかに及ばないんですが。


 


 


 


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