【詩】「W.H.オーデンを読む夜」 [詩]
「W.H.オーデンを読む夜」
その五十番目の詩で、オーデンは、
1939年に死んだ、W.B.イェイツへの追悼詩を書いている。
He disappeared in the dead of winter:
冬の死のなかに消えた彼
小川は凍てつき、彼の体の地方(provinces)は、しゃれた港とは縁遠く、
昔ながらの岸辺、母語を弔う
mourn
この言葉は、ブルース・スプリングスティーンが、『レスラー』という映画の主題歌で歌っていた歌に含まれていた……
誰か、お葬式を見たものはいないか?
ミッキー・ローク扮する、ぶちのめされたレスラー
人生の落伍者
一方、オーデンの死は難解だ
死んだ詩人の肉体を土地に分解し、
それじたいを、みずから土に返そうとするかのようだ、
The wolves ran on through the evergreen forests,
狼たちは常緑樹の森を走り続ける、
天文学的と言っていい単位の
情報が降り続けるこの森に
棲まいはじめて、われらはもはや、
ネット以前のディスクールを、
凍った森、あるいは、夜、あるいは、死に
返さねばならない。
そうその日のことを、
書きつづったのだ、この、
T.S.エリオットとは逆に、
英国人から米国人になってしまった男は。