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『バイス 』──俳優の楽しみ満喫フハフハ暴露モノ、メタ味(★★★★★)

『バイス』(アダム・マッケイ監督、2018年、原題『VICE』)

 

「記者たち」の裏狂言といっていいほど、時期(9.11直後)といい、焦点(イラク爆撃)といい、重なっている。「記者たち」では、アメリカの「テロとの戦い」において、9.11首謀者と通じていると思われたイラクのサダム・フセインが、大量破壊兵器を隠し持っているといって、イラクを爆撃するという行為が、是か非か、から始まって、細かい取材を重ねて、有名ではない新聞社の記者たちが、「真実」を証してみせるというものだった。

 同じ「歴史的事実」を扱いながら、本編では、この時代の主役の大統領というよりも、目立たない副大統領に焦点を当て、当時の政治のからくりを暴露してみせるという趣向だ。本編の主役、しかし、チャーチルやヒットラーのような「スター」ではなく、ジョージ・W・ブッシュ大統領の補佐でしかないように見られた人物が、実は、大統領その人ばかりか、法律さえ都合のいいように変え、アメリカじたいを手玉にとっていたという、まさに「驚愕すべき」事実である。

 「アメリカの議員はクズばかり」と、それを描ける自由を考えず、怒っている素朴すぎるレビュアーに、こちらは驚愕(笑)するばかりなのだが、よく考えてみれば、このテのワルは、歴史的にはそれほど稀でもないだろう。そして映画の趣旨は、そのワルには、家族もあれば、繊細な愛情もあれば、という「人間的な」面を描きながらも、決して共感へは誘わず(笑)、メタ・フィクションすれすれに、遊びながら描いてみせることにある。かなり高級ワザの映画である。その高級さを支えるのは、体重を20キロ増やしてチェイニーその人になりきる、クリスチャン・ベイルと、死に神にたとえられた、ラムズフェルドを演じる、超一流のカメレオン、スティーブ・カレルほか、「なりきりそっくりさん」の俳優たちである。これぞ、俳優の楽しみ。まー、俳優って、ほっんと、楽しいもんですねー。で、ある。それにしてもだ、旬の美青年、ティモシー・シャラメの父親を演じる、カレル、そのマジ顔のチラシの写真は、こちらの方が、思わず笑えてくるほどである。よー、こんな表情できるよって(笑)。





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