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【詩】「ねじの回転」 [詩]

「ねじの回転」

 

ヘンリー・ジェームズの『ねじの回転』は、彼の恐怖小説の怖さからいったら、中程度の作品だ。「ねじの回転」というイメージはいかにも怖ろしげだが、作中、「ねじの回転」は出て来ない。果たして、この題名によって、なにを言いたかったのか──などと考えながら、同時に、式部のことを思えば、大聖堂は焼けて、ガーゴイル(この建築にある、雨樋のような魔除けのような彫刻)の取材もできない。

燃える大聖堂の写真は、私には「金閣寺」と重なり、不謹慎な想像であったか。だが、想像が働くのを誰にも止められないだろう。そしてジェームズの作品中で一番怖いのは、固有名詞が出て来ない、人間関係の不思議さを書いた作品で、題して「友だちの友だち」

あの詩人はきっと、無名な人間の作品を冊子に載せるのに許可などいらないだろうと考えたのだろう、というか、そんなことさえ、思いつきもしなかったのだろう、現に、私はぬか喜びし、小さな砂粒のような疑問を忘れようとした、

毎月出していたその冊子は一年以上届けられたが、ある日突然来なくなった。それが終わったのか、送るのをやめたのか、知らないし、関心もない。格上だと思っていたので、毎月届くごとに、感想を絵葉書に書いて送ったが、なんら反応はなかった。詩集(冊子程度のものだが)も出すごとに送ったが、なんら感想はなかった。思えば、その人は、周囲の「格下」の人々とそういうつきあいをしていた。一見気安げ、しかし、なんらかの理由で、その人を利用していて、その利用が終わったら、何食わぬ顔して切るのである。つまりは、友人ではなかった、知人でもなく、そう、ある事柄を、利用「させてもらっていた」

思えば、その人の作品をいいとも思わなかったし、どこにも魅力を感じなかった、ただその人が「有名人」だったので、お追従をしていたのだ、その人はよい人柄とは言えない、はじめからそういう印象だったので、とくに残念なことはないが。こういう心の襞を、ヘンリー・ジェームズは、もっと精緻にうまく、描く。

ひとには心があり、それは、ナマモノ。そしてそれを、ときには、

幽霊と呼ぶ。


マドレーヌ1904.jpg


 

 


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