【詩】「捨てるもの」 [詩]
「捨てるもの」
まず、
ベンヤミン
それから
ラカン
折口信夫にも
寄ってられない
柳田国男は捨てない
ヘーゲルはとうに捨て
たぶん
カントにも寄ってられないだろう
ゲーテはかなたで
ホバリング
なれど
いずれ
捨てることになるだろう
さういふ
枝葉に
かかずらわっていたら、
おのれの
思考を深められない
ショーペンハウエルとかいう哲学者が言ったそうではないか、
それらは、所詮、他人の思考にすぎないと、
借りているということを認識しなければ
ね。
そこの
ヲジサン、ヲバサン。
【詩】「春樹」 [詩]
「春樹」
ボクの名前は、島崎春樹。
女学校の教師だ。
教え子を愛している
佐藤輔子(すけこ)
ヘンな名前。そして、両親が決めた
許嫁がいる。だからボクは、
旅に出た。巡礼の旅だ
関西から四国まで
明治女学校ではボクの代わりに、
北村ってやつが教師になった。しかし、その北村が
発狂して自殺したので、しかたない、ボクはまた、
その学校に戻った。そして、
詩のようなものを書き始め、
小冊子の詩集を作った。その詩集の名は、
『若菜集』。
この頃詩を書くのに夢中になっていたやつらがいた
田山花袋
国木田独歩
柳田国男という大学生
彼らと、詞華集を作った、その名を、
『叙情詩』
それは、明治三十年。
1897年
この年、
日本の近代詩は始まった、
とか言われる。
ボクは二十六歳で。
どうも春樹って名前は
お坊ちゃんみたいなところがあるので、
名前を変えようかなーと思った、たとえば、
藤村とか。