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『主戦場』──妖怪大図鑑(★★★★★) [映画レビュー]

『主戦場 』( ミキ・デザキ監督、2018年、原題『SHUSENJO: THE MAIN BATTLEGROUND OF THE COMFORT WOMEN ISSUE』)

 

「ヨーロッパに一匹の妖怪が徘徊している。コミュニズムという妖怪が」

 

 と、マルクスは、『コミュニスト宣言』(1848年『共産党宣言』という訳もあるが、「党」をイメージさせる内容ではないという筑摩書房版採用)の冒頭で書いたが、まさに、世界には今、レイシズムという妖怪が跋扈していて、それは、思想的には、一匹だが、その「分身」を見るなら無数にいる。その妖怪を並べてみせた、妖怪図鑑である。

 

 妖怪は妖怪、右翼の名前には値しない。さあ、どんな妖怪から攻めていこうか。まず、CIAなどが日本を支配するため、戦犯を首相にしてしまった、その妖怪、岸信介。その孫で、祖父の思想をまんま受け継ぎたいと思っている安倍晋三。インタビューされてはいなかったが、なんとなく、カメオ的に、口を曲げたまま国会で居眠りしているのが映し出された、麻生……下の名忘れた(爆)。歯並びがガチャガチャのブス、杉田水脈とかいう妖怪は、奴隷とは、鎖で繋がれて動けなくさせられた人間のみを指すような解釈を滔々と披露。櫻井和服妖怪。あと、眉毛を細くしている男の妖怪。自称歴史学者妖怪。……などなど、それにしても、ケント・ギルバートって、(アメリカ映画のインタビューだからしょうがないにしても)日本語力はそれほどなかったのか? アメリカでは弁護士で、日本ではテレビタレントだって(爆)。この妖怪は、金のためなら、中国へ行って、シュウキンペイバンザーイ!てなことも平気でやるだろう。

 

 どーでもええが、これらの妖怪どもはアタマが悪すぎる。だいたい、戦争当時に、まともに、メディアが機能しているわけがない。負けそうな戦争だって、「わが軍快進撃!」なんて平気で載せていたのだから。そんな、兵士の性欲のはけ口としての慰安所の真実の「記録」なんか、まず、あるはずないと考える方がまっとうでは? 本作のテーマは、「慰安婦」でしたが、それを辿って、「日本の極右政権」があぶり出された。日本の方が技術が進んでるから、中国はやっかんで……みたいな発言を平気している妖怪がいたが、それは違っている。中国はスパイをアメリカに送り込んで、日本を超える技術力は持っているでしょう。軍歌もろくに知らない新世代の自称右翼(ネトウヨなど)が、これらの妖怪のいうことを信じ切ってしまうのも、ネットがもたらした深刻な弊害のひとつだろう。

 それにしても、アメリカの、ただのジジイで、「ユーチューバー」の、かつての西村晃みたいなジジイの妄想みたいな発言をなんでまともに受けとめねばならんのだろう? しかしね、こんなのは序の口です。妖怪の真打ちは→「ホロコーストはなかった」、と言ってますからね。収容所跡地も、克明な写真も、膨大なサバイバーの証言もあるのにね。

 こういう映画は、いくら日本の政治がテーマとはいえ、アメリカでなければできないだろう。平板に流れがちな、インタビュー中心の地味なフィルムを、和太鼓のBGMで、味つけしたのは、すばらしい。






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【写真】「温かな台所と夜の庭」 [写真]

写真】「温かな台所と夜の庭」


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