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『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち 』──Time is life(堀江貴文『時間革命』より)(★★★★★) [映画レビュー]

『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち 』(キム・グエン監督、2018年、原題『THE HUMMINGBIRD PROJECT』)
 Facebookの創始者、マーク・ザッカーバーグを描いた『ソーシャルネット・ワーク』で、ザッカーバーグその人を演じて、GAFA時代の感性と知性を体現し、かつ、ザッカーバーグより「きれい」(笑)な、ジェシー・アイゼンバーグは注目せざるを得ない俳優である。彼は、小柄で、線も細いが、なにか21世紀的な根性を表現できる。その彼が、彼とは対照的な、筋骨隆々で大柄な美丈夫(だったんですけど(笑))、ターザン俳優の、アレキサンダー・スカルスガルド(「ツルッパゲ」は、自かどうか(笑)。その「光り方」が妙にリアルであったが(笑))とコンビを組み、同じロシア移民のユダヤ人、従兄弟同士として、NY証券取引所の金融界に挑戦した。かつては、ここでは、マイケル・ダグラスが、紙幣の雨のなか踊り狂っていた(爆)。実際、私は現地へ行ってみたが、NY証券取引所のある「ウォール街」は、思ったより狭い場所だった。近くには、9.11事件の貿易センタービルもあった。埠頭に近い、アメリカを象徴する場所である。その場所から、アイゼンバーグ扮するヴィンセントが、光回線を敷設しようとする、データセンターは、1600キロ先のド田舎(?)のカンザス州にある。それが実現すれば、株の売買が0.001秒短縮され、年間500億円の利益が見込まれる──。
 当然、「出資者」がおり、その回線敷設に必要な土地が買収される。「道中」も大変ながら、ヴィセント自身、胃がんであることが発覚する。すぐにでも治療を開始しなければ、生存率も低くなる──。そんな苦難のなか、「敵」役の、プログラマーのスカルスガルドが元いた会社の上司、サルマ・ハエクが、さらなる試練をけしかける。土地買収も、農家の地主のがんこさでうまくいかない──。
 結局のところ、計画は挫折し、ヴィンセントは、生とは何かに目覚める。そういう物語を、地味な、荒地、コンピュータや周辺機器、自然が降らせる雨や雪、光、などで見せる。語りにくいものを、アイゼンバーグの肉体と演技が体現する。音楽もさりげなく洗練されている。



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【詩】「La Carte Postale(絵はがき)」 [詩]

「La Carte Postale(絵はがき)」
「第一次大戦と第二次大戦とでは、第一次大戦の方がはるかに悲惨だったね」小林秀雄が河上徹太郎に話しかける。河上相づちをうって、
「ああ、そうりゃあもう」
その会話を聞いてから、その証拠を探し始めている私
だがめぐり合うのは、カリカチャライズされたものばかり。
「ソクラテスからフロイトまで、そしてその向こう」『La Carte Postale』の副題。
Vous pourriez lire ces envois comme la préface d'un livre que je n'ai pas écrit.
これらの郵便物をぼくが書かなかった本の序文として読んでくださいますか。
Jacques Cerrida より愛を込めて
絵はがきはいつでもすてきだ。
軽くて心がこもっていて
権威もカースト最下位も区別しない
法王庁の抜け穴もブラジルのゴミ山も
すべて含んで
舞う。うわ〜乱丁ですか、これ。30ページの次が逆さになった62ページで、31ページは63ページの直前にあります。その間、文字はずーっと逆さです。
たぶん、わざと。
より絵はがきらしく。
ね?
かしこ。×××




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『アド・アストラ 』──最高に美しいブラピとまったく新しい映画(★★★★★) [映画レビュー]

『アド・アストラ』(ジェームズ・グレイ監督、2019年、原題『AD ASTRA』)
 本作は、キューブリックの『2001年宇宙の旅』を見てない人、ホメロスの『オデュッセイア』を読んでない人、また、テオ・アンゲロプロスの『ユリシーズの瞳』を見ていない人、スピルバーグの『未知との遭遇』を見ていない人、には、なんのことかわからない。そして、宇宙モノ、ということで、勝手な期待をして、それが裏切られたと怒りまくる……そういう観客は、進化前の類人猿にさも似たり(笑)。そういう観客は「見るなよ!」という意味で、わざわざ、題名を、ラテン語にしてある。訳してみれば、「宇宙へ」ですかね。そして、そういう映画を、ブラッド・ピットは作りたかった。制作側は「ブラピを無駄遣い」っていう、無知丸出しのレビューがあったが、ブラピが制作なんですっ!
 ここには、最高に美しいブラピが、最高に繊細な演技をし、かつ、見たこともない世界、視点が映像化されている。これぞ、映画を見る意味なのである。
 冒頭宇宙服姿のブラピが宇宙船に乗り込もうとするが、「サージ」が起こり、悲惨な事故を見せつける。コロンビア号の事故ではないが、発射台などがぶっ壊れ、ブラピを含む宇宙飛行士たちが投げ出されたりして死亡するが、ブラピは機転によって辛くも生き延びる。
 「サージ」とは? 私が解釈するに、異常な重力波ではないかと思われる。それが、太陽系の彼方から来ていることがわかる。そこには、人類の存在する気配がある。というのも、「サージ」は、人工的に起こされた核爆発などを起因とするからである。そしてその位置は……海王星の付近……ちょうどロイ(ブラピ)の父が行方を絶った位置である。ブラピの父は、優秀な宇宙学者であったが、地球外生命探索に乗り出し、それに熱中し、太陽系の彼方、海王星あたりに消えて、十数年経ち、死んだものと思われていた──。
 しかし、「サージ」が起こったことで生きているかもしれないということになり、息子のブラピが探索へと、政府から任命される。
 タルコフスキーの『惑星ソラリス』をも彷彿とさせる、内面の語りと、見たこともないような月と太陽系の惑星の風景、それらのほとんどは、住めるようになっている。ヘルメットをかぶったブラピの顔が何度も映し出され、観客はヘルメット越しに彼の顔を見ることになるのだが、その表情は、美しく繊細で、涙をひとすじ流すが、無重力下では、粒となって飛ぶところを、スッとほほを伝うような「非科学」をわざと選択している。
 結局、物語は、ブラピの心の成長……のようなものに収束していく。非科学的と、非難しているレビュアーもいたが、こういう一般人に指摘されるまでもないだろう。それは百も承知のうえであり、だいたい、科学は、一種のイデオロギーにすぎないのである。そのあたりを、五十を過ぎていまだに、整形することなく、自然な美しさを保っているブラッド・ピットが、入魂の演技をする、美しいだけではなく、志も高い。




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【詩】「ジクムント・フロイト」 [詩]

「ジクムント・フロイト」

 

科学、とはなんの関係もない

人間における性生活とは、イデオロギーにすぎない、

夢は独立し、暴走する

迷宮への甘いあこがれ。実際アメリカで私は、

行方不明になった。弟子たちとりわけユングが

大騒ぎして探してくれた。

そんな推理小説。嗤ってくれたまえ

チェコ人の、羊毛商人の息子を。

しかるに私がうち立てた魂の大伽藍

二十世紀に光輝く人間の功績。だが、私は

激しく孤独だった。その激しさが、

精緻な分析に向かわせた。私が死んだら、いったい誰が、

宇宙を定義できるのか。

おやすみなさい、Have a good dream!

 


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【詩】「アンリ・ベルクソン」 [詩]

「アンリ・ベルクソン」

 

時間の中で、言葉と空間の間に吊られ

意識を取り出そうと夢見る。同時期フロイトと、

同じものを見つめ、

魂のありかを探る。

結局、肉体と魂は平行していないことを

発見し、みずからのなきがらを葬る。

そらこれが魂というものだ、それは、

焼き場では拾えない、死んだ時

ひとは魂を解放する、肉体から

それから時間だ。ブラックホールが

どこよりも明るいなんて

知っていたさ、彼は笑って

アインシュタインを

送り出す、空間へと。

 

 

 


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【詩】「詩人」 [詩]

「詩人」
私が「おとうちゃんへ」と書けば、みなは嘲笑って退く。
Lowellが"To Daddy"と書けば、みなは、きっと何かあると思う。
彼はアメリカの有名詩人だから(まあ、それさえ知らない日本の詩人は多々いるが(笑))。
有名人はいろいろなコースを通って「有名」となる。
多くの場合、権威と結びついて、読み手になにかを保証する。
無知な読み手は、それで安心するわけだ。
自分は高尚なものを読んでいると。そういう保証がないと、
とても不安な人々がいる。程度の低い、有象無象のヤカラには
金を払いたくない。しかし、実際、計る能力はない。
それで、有名であるかどうかを一種のはかりにするわけだ。
見よ! Lowellのdaddyは、尊敬され、
私のおとうちゃんは、歯牙にもかけられない。
いまだに、古い、詩のようなものを書いて悦に入っている、
あの「詩人」。嗤うのはこちらだ。
日本の狭い詩の世界では、それを権威だと
信じ込んでいる人々がいる。
クサいリフレインなんかしちゃってサ(笑)。


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【詩】「おとうちゃんへ」 [詩]

「おとうちゃんへ」
じてんしゃでかえってきていんさつのいんくのにおいのするほうそうしにつつまれたものをぶどうだよといったけどほんとうはみるくのみにんぎょうだったすでにくらいゆうがたのにわほどわくわくしたことはなかった。なるほどぶどうとにんぎょうはおなじやわらかさだった。そんなうそをどうやっておもいついたのか。





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【訳詩】「To Daddy」Robert Lowell ("History" 1973) [訳詩]

「To Daddy」Robert Lowell ("History" 1973)」
I think, though I didn't believe it, you were my airhole, resigned perhaps from the Navy to be an airhole____
that Mother not warn me to put my socks on before my shoes.
******
「とうさんへ」ロバート・ローウェル
あなたは、そうは思ってはいなかったが、ぼくの水ぶくれだ、たぶん水ぶくれになるために海軍を辞めた──
母さんは靴を履く前に靴下を履けとは言わない。




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【昔のレビューをもう一度】『妻への家路 』──やっぱり、チャン・イーモウなのか(★★★★★) [映画レビュー]

『妻への旅路』(チャン・イーモウ監督、2014年、原題『歸来/COMING HOME』)
2015年3月8日 20時10分  
 ひさびさのチャン・イーモウ+コン・リー。「世界中が涙」とパンフにあったが、な、泣けない……。確かに映像もすばらしく、コン・リーの演技もすばらしく……であるが、なぜだろう? すでにテーマが時代遅れのせいもある。確かに、文化大革命の残した傷跡というのは、あるだろう。しかし、今の中国はいったいどうなっているのか? 歴史を描くとしても、今の中国人の視点から見た歴史でなければならない。文革の放下より帰還という映画は、ほかにもあったように思う。それらと比べて、とりわけ抜きんでているわけではないと思った。ただ、さすがに、物語を紋切り型に収めず、妻の記憶は戻らず、「知人」として彼女が「夫」を迎えに、毎月「5日」に駅へ行くのに寄り添い続ける夫は、もしかして、自分自身の帰還さえ待っているのかもしれないということを考えさせた。そういう意味では、やはり、チャン・イーモウなのか。音楽は、かなり洗練されている。



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『SHADOW/影武者 』──あの赤、さすが中国のスピルバーグ(★★★★★) [映画レビュー]

『SHADOW/影武者 』(チャン・イーモウ監督、2018年、原題『影/SHADOW』
三国時代、日本で言えば、弥生時代で卑弥呼が活躍(笑)、西洋は、ローマ帝国の時代である。そんな時代の、国盗り物語の一エピソード、腕も頭もたつ、重臣の一人が、国を取り返そうとする話をベースに、おのれの影武者を作り、彼を、相手国の王と戦わせる。しかし……影武者、影であったものに、「本体」を取られるまでを描く。
 妻夫木聡に風貌ちょい似たりの、影武者と、とんでも爺に見える「本体」の重臣・都督を演じるダン・チャオがすばらしい。似ているから影武者なんだろうが、実際、全然似てない(笑)。
 多くのレビュアーが、水墨画とかモノクロとか書いているが、私にはそうは見えなかった。黒は、ネイビーであり、ブルー、水色などが、無限のグラデーションを作って、王宮や市街、隠れ家、湖、雨などを表出している。敵方の、刀というマスキュランな武器に対して、影武者と常に「夫婦を演じさせられている」、都督の妻が、自在な、傘という、フェミナンな武器を思いつく。その傘の動きが、本作の見せ場である。ブーメンランのような武器を仕込んだ傘が、雨の戦場で舞う──。そして、おそらく、この「赤」を目立たせるための、暗い色使いであったことがわかる。すなわち、戦場で流される血である。それだけが赤く美しく、流れていく。さすが中国のスピルバーグ。





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