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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 』──落ち目なのはタランティーノ(笑)(★★★★) [映画レビュー]

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(クエンティン・タランティーノ監督、 2019年、原題『ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD』)


 歴史=事実というものは変えてはいけないのである。そういうことが許されれば、ホロコーストはなかったという筋書きも、また、ヒットラーは善人だったという設定も許される。現に「シャロン・テイト惨殺事件」は、ハリウッドで起こってしまっている。これをあとから、実は、この映画の主演の、落ち目のテレビ俳優と、そのスタントマンのおかげで「難を逃れた」ということに「してしまって」、いったい何が救われるのだろう。シャロンの魂が救われるとでも? 「奇跡のラスト13分」というのはまったくの売り文句であろう。こういう売り文句でもなければ売れなくなった、落ち目の映画監督、それがタランティーノである。……ってなことを暴露してしまった映画と言える。映画愛かなんか知らないが、1969年のハリウッドのセットを舐めるように撮る、ひとつひとつのエピソードが長すぎる。気がついてみたら、三時間近くも座らされていた(笑)。

 しかしまあ、悪いところばかりでもない。ディカプリオとブラピという、或る意味「無冠の帝王」的二大スターを、落ち目スターと、そのツレの、スタントマン兼付き人という、実際の二人からはほど遠いキャラクターを創り出したことは近年の快挙と言える。とくに、ブラッド・ピットは、五十過ぎてなお若々しく美しく、演技も軽やかで心地よい。シャロン・テイト(マーゴット・ロビー)が、この映画の影の主役という意見を、「Yahoo!映画」の評論家氏は書かれていたが、どーでしょーか? それほど魅力があったとも思えない。むしろ、この映画は、ブラピのかっこよさを見せつけるためにあったと言ってもいいくらいである。なんせ、誰よりもスターになって当然(つまり現実はそう)なのに、しがないスタントマンをやって、ディカプリオは一応豪邸に住んでいるが、ブラピはピットブルみたいな犬と、トレーラーハウスに住んでいる。若い女ヒッピーの誘惑にも屈しない。ディカプリオ邸のテレビのアンテナも「見ておいてくれ」とディカプリオから頼まれると、ディカプリオをスタジオに送ったあとに、道具を持って邸の屋根に上る。こういうどうでもいいような作業がていねいに描かれて、それがブラピの魅力を増す。そこから、隣りに引っ越してきた、ポランスキーの妻、シャロンが音楽で踊っているところも見えるのだが、ブラピは特別反応しない。ブルース・リー風(?)のスターにイチャモンをつけられて、カンフーの技をかけられるも、リーを倒してしまう。シャロンを惨殺するためにポランスキー邸に押しかけるはずの、チャーリー・マンソン(オーム真理教の麻原みたいなやつと思えばいい)の命令を受けた信者たちが偶然ディカプリオ邸にやってくると、台所(?)だかにいたブラピが応酬して殴り殺してしまう。マンソン以上に得体の知れない無気味なやつなのだ(笑)。しかし、このキャラは新鮮であった。ブラピはこの後、「ブラピ史上最高の演技」と言われる、SFものにも出るし、意外や意外、ただの昔美形のオヤジではなかった。ことだけが、印象づけられる映画なのである。

 タランティーノは10作作ったら映画をやめるというウワサがあるが、本作が9作めである。これまで、私は8作は観ているが、10作目を撮る前にオワコンの雰囲気(合掌、アチャーッ!! それにしても、ブルース・リー風の役者はちんけすぎた。ファンから怒られてもしーらないっと(笑))。




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【詩】「リルケに捧ぐ」 [詩]

「リルケに捧ぐ」
主に捧げる秋の詩の
錆色の葡萄傷心だけが私の唯一の収穫
宇宙の果てに消えた父を探して
出かけねばならないどうやって?
宇宙飛行士としての訓練もしてなくて
宇宙服もなくNASAにも登録してなくて
ナンタケットだけは覚えている捕鯨の基地
そうわれらの国は実験用として食用よりも多くの
鯨をとっていた主よ許したまえこの
愛らしい動物を解体して食っていたこと
iPad miniで聴くドイツ語が直接私に降り注いでくるそは
神のかたこと
もう13行目まできたのにブランクでやりすごし
いちばんたやすい詩法でごめんこうむるDie Sonette



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