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『下谷万年町物語』──ファッションとしてのオカマ [演劇]

 

『下谷万年町物語』唐十郎作、蜷川幸雄演出@シアターコクーン 出演:宮沢りえ+藤原竜也+西島隆弘(2012/1/6(金)〜2/12(日))

 

 唐十郎の芝居は、状況劇場も唐組も唐組ゼミも観たが、パルコ西武劇場で30年前に上演されたという本作は、当時未見だった。脚本は、あいも変わらず、唐十郎の個人的ノスタルジーの世界と、でたらめな言葉の羅列である。それでも、それが肉化すれば、何物かに変わる。芝居の醍醐味はそんなところにある。蜷川幸雄はそのへん、プロデューサー的策士で、巷で人気の鑑賞に耐える肉体を担ぎ出してきては、アングラだの古典だのをやらせる。話題にならないワケはない。とくに今回は、宮沢りえ+藤原竜也+西島隆弘+たくさんのオカマである。人々はこぞって見物にでかけるだろう。

 確かに宮沢りえは、野田秀樹の『ロープ』の頃に比べると、格段の進歩である。声はすっかり、李礼仙である(笑)。パワーも李礼仙が乗り移ったかのようである。李礼仙を知らないジャーナリストは、すっかり感動してしまうようである。しかし、昨年上演された、唐ゼミの『万年町』の、同じ、キティ瓢田を演じた女優も、誰かがブログで、「李礼仙を超えた」と書いていたから、この役は、パワーさえあれば、誰でも魅力的に見える、お得な役なのかもしれない。私はむしろ、藤原竜也と西島隆弘の立ち姿の美しさと演技力に感心した。これからが楽しみな役者たちである。蜷川に使い古されないといいけれど(笑)。

 昭和23年の上野の男娼長屋を再現(?)した朝倉摂の装置と、洗練された吉井澄雄の照明は、さすがにBunkamura、コクーンであると思わせられる。(2012/2/9に観劇)


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「お写真」は、雪の日に遊ぶわん太。

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『六月博多座大歌舞伎』──変革しないと歌舞伎は滅びるかもしれない [演劇]

 

『六月博多座大歌舞伎』(夜の部)

 

一、 仮名手本忠臣蔵

   七段目 祇園 一力茶屋の場

   大星由良之助 幸四郎

   遊女おかる 魁春

   寺岡平右衛門 梅玉

 

二、 英執着獅子(はなぶさしゅうじゃくじし)

 

   姫のちに獅子の精 藤十郎

 

三、 魚屋宗五郎

   新皿屋舗月雨暈

 

   河竹黙阿弥作

 

   魚屋宗五郎 菊五郎

   女房 おはま 魁春

   召使い おなぎ 萬次郎

   浦戸十左衛門 左團次

   磯部主計之助 松緑

 

 豪華な出演者であるが、もはや、歌舞伎界は、ネームバリューだけが客よせのための大きな売り物になっている。だが、いかなる名優も年を取る。花伝書にも「引き際肝心」とある。上のスターたちを見れば、とうに引退していていいお年のはずである。それを、老体に鞭打って(?)、公に肉体を晒し続けなければならない高齢化社会哀し……である。

 

 まづ、松たか子のオトッツァン、幸四郎は、ミュージカル「ラ・マンチャの男」のやりすぎか、もはや、歌舞伎の文脈を忘れてしまっているようである。もともとそれほど歌舞伎がすきでないのか、芝居が段取りになっている。酔っている場面と、冷静な場面との、メリハリが見せ所なのに、その差がわからない(笑)。セリフも口もごもごで、なにを言っているのか、わからない。

 

 次に、人間国宝、坂田藤十郎。かつての振り袖姿の、コサックダンスはすばらしかったが、その体力はすでになく、いくら稽古を重ねても、ついていけないエージングの哀しさ、空しさを、もっと肉体に溜めるべきである。そうすれば、演目も決まってくるであろう。客がアクロバット的なものを期待するからと思うのか、獅子のカツラをつけての頭まわしは、限界であるぞよ。踊っている間の口ぱくは、入れ歯が合わないのか……?

 

 最後に控えし、寺島しのぶのオトッツァン、菊五郎。この人は、根っから芝居がすきなのだろう。それに華がある。色がある。で、トチリ(今回はなかったが)など気にせず突き進むところがよい。ので、やはり今でも観客を引きつける。けれどそれでも、限界はあるだろう。寂しいけど、早いうちに引退した方がいいかも。しかし、もう引き際を見失った、上記、お三方なのかもしれない。

 

 脇には、それなり芸のある役者がいる。遊女おかると、魚屋のおかみのおはまを使い分けて演じている魁春など、安定した芸を持っている。どうだろう、こういう人々に、主役を譲っては?

 秋には、アノ、海老蔵が、オトッツァンの団十郎と共演出演するようであるが、マスコミは、暖かい目で、こういう、姿かたちのいい若手を見守ってもらいたい。松本家の染チャンとか、寺島家の菊之助とか、正真正銘のサラブレッドたちに、コクーン歌舞伎もいいが、本家を本気で継いでもらいたい。とはいえ、歌舞伎は、「松竹」が支配していて、マネージメントにはいろいろあるんだろう。

 

 最後に、演目の『仮名手本忠臣蔵』であるが、いったい「誰」の作なのか、竹田出雲、三好松洛、並木千柳作の、アノ古典『仮名手本忠臣蔵』とは、ちとちがうようである。

 わかりやすいように翻案してしまった「台本」が流通しているんでしょうか?


 

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