『KAGEROU 』齋藤智裕著──「作家」とはそんなにいいものか? [Book]
『KAGEROU 』齋藤智裕著(ポプラ社 2010年12月刊)
アマゾンでレビューを書いたり、読んだりしていると、しだいにわかってくるのだが、どうもレビュー数は、売れている数と連動していると思う。その点、本書のレビュー数(670件あまり)も例外ではないでしょう。
村上春樹もここまで多い著書はないと思う(『ノルウェイの森』上巻で約370件)。
問題は、いかに読むかということである。ファンとして、何かを探ろうと読むなら、それはそれで、ひとつの読み方ではある。ただ、私は、有名な名前の芸名の方も、mixiでファンの人が書いていたのでやっと知ったぐらいなので、本名だろうが、芸名だろうが、関係ない。
売れているはずのタレントだかなにかをやめてまで、「作家」になりたいのだろうか? ニュースによれば、2000万円という賞金を辞退してまで、彼をそうせているものはなにか? 考えることの方が興味がある。
それほど、「作家」という肩書き、あるいは、「職業」は魅力があるのだろうか? ほんとうに書くことがすきなら、賞を狙わず、出版社に持ち込み(有名な芸能人なら、稚拙でもどこかで出してくれただろう)か、自費出版(どんな豪華本でもできたでしょうに)すればよかったのではないか? やはり、出版社が彼の知名度を利用したのなら、彼も、一応文芸書を出す出版社の賞という「ステイタス」を利用したのでしょう。ま、持ちつ持たれつですな。
ただ文章だけを言うなら、数ページを読めば、まあ、この人は、あんまり文学作品は読んでないんでしょうね、ってのが、まるわかりの文章ではあります。しかし、その割には、「がんばって書いてる」とは思いますよ。しかし、そういう状態で、どこまで行けるかは、不明ですね。次回作に、期待します(笑)。
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細かいことを言うなら、本書は、236ページで、原稿が実際に印刷されているページ数は、233ページ。一般的な文芸書の組み方は、40字以上×18行ぐらいなのに対し、本書は、38字×14行で、1ページの字数が、かなり少ない。
原稿用紙の枚数に換算すると、300枚ほどしかないはずで、「長編」として、1冊の本にするには、ちょい厳しい。かてて加えて、確か、「ポプラ社小説大賞」は、最低枚数は、300枚より多かったはず……てなことを考えながら、確かめるために、「ポプラ社」のサイトに行ってみたら、なんと、「第5回をもってポプラ小説大賞」は終わり、「ポプラ社小説新人賞」になってました。賞金も、2000万円から200万円に、枚数も、最低枚数は200枚に……。
ということです。しかし、この出版社の本で、けっこういい本もあったんですよ。翻訳書ですけど、スタインベックの『チャーリーとの旅』(スタインベックが、スタンダード・プードルと旅する様子を描いたエッセイ)とか……。
http://www.poplar.co.jp/taishou/apply/index.html
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