SSブログ

『バビロンの陽光』──過酷なロードムービー [映画レビュー]

『バビロンの陽光』モハメド・アルダラジー監督

 

 なにもない砂漠、汚れた衣類、壊れた道具や機械、荒れ果てた街……。災害ではない。内戦である。内戦が起こっていた国である。虐殺が虐殺を呼び、人々の感情は、壊れながらも生き続け増殖する。憎しみ、絶望、悲しみ……それでも人は、希望を植え付けられ、生きさせられる──。

 サダム・フセインが逮捕されたあとのイラク。何百万人もの人々が虐殺されていた。集団墓地が何百もあり、肉親を捜して、人々の絶望の旅は続く。

 クルド語しか話せない祖母と、アラビア語も話せる少年の二人も、息子であり父である身内を捜す旅に出る。そこから映画は始まり、過酷な旅をゆく。ヒッチハイクの車もバスも、どうにか動いているにすぎない。砂埃が画面から舞ってくるようである。これもひとつの生に違いない。だが、なんという生なのか。バビロンを持つイラクは、かつては夢のような国であった。それが、廃墟のようになっている。いや、廃墟という言葉はまだ美しすぎる。悲惨な光景ではあるが、本編のテーマは、「悲惨」ではない。「夢」。かつてあった夢のようなものの幻影を見せる。そして、こんな状況でも、わんぱくであった少年は、おとなの顔になっている。

 

旧約聖書〈7〉イザヤ書

旧約聖書〈7〉イザヤ書

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/05/08
  • メディア: 単行本







イザヤ書〈上〉 (1961年) (岩波文庫)

イザヤ書〈上〉 (1961年) (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1961
  • メディア: 文庫

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。