「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」──少年の清らかさ [映画レビュー]
「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」(スティーブン・スピルバーグ監督)
THE ADVENTURES OF TINTIN: THE SECRET OF THE UNICORN
フランス人なら誰もが知っている、フランスのエスプリたっぷりのあの「タンタン」を、イギリス人俳優だけで演じている痛快さ。もしフランス人がフランス語で演じたら、たとえスピルバーグといえど、これほどの漫画っぽさは出せなかっただろう。これは「アニメ」ではなく、「漫画」である。古き良き、夢のある時代を匂わせつつ、紳士なセリフまわしで世界冒険に出なければならない。漫画の主人公は、「鉄人28号」(古くてごめん(笑))の正太郎クンといい、コドモなのに、職業を持っていたり、車の運転をしたり、ピストルを持っていたりする。すべて、「少年の夢」の世界である。
わがタンタンもしかり。しかも、特ダネをたくさんものしている、有名なジャーナリスト。そんなはずはあり得ない(笑)。しかし、漫画というものは、アメリカの「カルヴィンとホッブス」しかり、少年がまるでおとなのようにふるまうものである。しかし、ではなぜ、おとなでなく、いつも少年が主人公なのか。それは、世界の清らかさを求めているからである。
スピルバーグはそこのところをよく心得ていて、帆船が重要なテーマではあるが、間違っても、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のように、どこか薄汚く撮っていない。悪役の犯罪者も、すべて清らかなのである。
そして、スピルバーグは世界的な巨匠になりながら、どこかの国の黒澤明のように(笑)巨匠然とはしていなくて、常にリスクを取っている。それでこそ、真の巨匠! 「犬目線」や「鳥目線」のデティールにも感心した。
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