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詩「今はもう誰も杉村春子など思い出さない」 [詩]

【詩】

 

「今はもう誰も杉村春子など思い出さない」

 

 しなの町の文学座アトリエに行くと

 まだ開演前で

 年配の女優たちがアトリエ前の敷地で

 たき火を囲んでいた

 杉村センセイ!と

 北村和夫も江守徹も

 抱かせていただきます!!

 と、尊敬しながら

 看板女優を抱いた

 

 小林秀雄は、横光利一との対談で、こんなふうに言っている(『直観を磨くもの』(新潮文庫))──。

 

「先日久保田万太郎の『或る女』を見せられたが、痩せてカサカサの女が寝巻を着て寝台に腰かけていた、あれでもう、あの芝居は落第だ。あの芝居は肉体的の色気が一つでもある女主人公をつかえば成功する。杉村春子はどんなに技巧をこらしても肉体的の貧弱さを掩(おお)うことは出来ない。小説はいいが芝居ではあの女では全部だめになる、これを知らないで万太郎が営々と脚色しているのが気の毒になる」

 

 そう、技巧だけで何かになれると

 思われていた時代

 シング !! などといってみても

 誰もアイルランドなどに

 行ったことがなかった

 杉村春子は

 広島の出身だったか

 演劇ハンドブックにある

 日本標準アクセントではなく

 東京下町のアクセント

 を、正しいと思って

 身につけていた

 だからテレビドラマでも

 「よその人」という時、

 「よ」の上にアクセントを持ってきていた

 さういふ時代

 が日本にもあった、だが

 もう誰も、杉村春子など

 

 思い出しはしない

 

 



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