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『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』──ハリウッドで最もかっこいい男(★★★★★) [映画レビュー]

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(ジェイ・ローチ監督、2015年、原題『TRUMBO』)

 

 反骨の男はかっこいい。それが、書く才能があって、家族を愛する心やさしい男だったらなおさらである。それに反して、本作に登場する、ハリウッドのスター俳優役の男のように、最初は資金面で協力するが、下院非米活動委員会に喚ばれ、裏切って「共産主義者たち」の氏名を言ってしまい、その後、金を返しに来た主人公に言い訳をしている男は、みっともない。言い訳というのは、裏切りよりもみっともない。

 第二次大戦後のハリウッドには、ソ連をはじめ、東欧圏からの移民や、ニューヨークで芝居をやっていたインテリなどが集まり、脚本家や監督などに、リベラルな人々がいた。いわゆる「赤狩り」は、そうした人々に魔の手を延ばし、徹底的に思想弾圧した。これは国家全体というより一部の政治家によって行われた措置だった。ハリウッドの中にはそうした措置に協力する人々もいた。

 コーエン兄弟の『ヘイル・シーザー』といい、ようやく、ハリウッドがそういうものを、リベラルの側から語り始めたのは、アメリカ自体が大きく変わってきた証である。

 そういう思想弾圧の時代に、思想を貫き、しかも、自分なりの戦いをし、たとえ名義は違っても、歴史的な名作を残していくダルトン・トランボは、今の時代のヒーローである。風貌はただのオッサンであるが、そういう人物が主人公の映画ができるようになったのも、ハリウッドの大きな変化である。

 作中には、いろいろ心に残る台詞や場面がある。議会での証言を拒否して投獄されるトランボは、獄中で、赤狩りに協力的だった同業者で、脱税で投獄されていた男に出くわすが、「お互い同じ行く末だったな」みたいなことを言われると、「そっちはホンモノの犯罪で入ったんだろ」と言う。

 赤だろうとなんだろうと、おもしろい脚本さえ書けば誰だっていいという構えの、ジョン・グッドマンが社長を演じる、二流映画専門会社の存在もおもしろい。ハリウッドの一流どころを干されたトランボは、ここでもじゃんじゃん書く。

 トランボ役の、ブライアン・クランストンもいい味出しているが、彼の妻、クレオ役のダイアン・レインがいい。知的でやさしさに溢れ、いくつになっても、それこそ子役時代の利発な少女といった風貌が消えずにあるところがすばらしい。「カーク・ダグラス」も、思想を貫くかっこいい男として表現されている。

 



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