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「わが夜の詩人たち」 [詩]

『わが夜の詩人たち』

「谷川雁」

 飯島耕一が「るしおる」という冊子に書いた「定型論争」の資料を、谷川雁が読みたがっているので貸してくれと、知り合いの編集者が言ってきたのでお貸ししたら、その後、谷川雁はお亡くなりになって、ついにその冊子は返ってこなかった。あの世までお持ちになったのであらうか。くまったもんだ。そして、私は、谷川雁がどんな詩を書いているのか知らない。さらに、くまったもんだ。



「石原吉郎」

 大学四年あたりから卒業して一年くらい、詩の雑誌に投稿していて、石原吉郎という詩人にずいぶんひいきにしてもらった(らしい)。のちに同人となった人が、「まるで孫娘みたいに眼をかけていて」などと言われた。私は、石原吉郎がどんな詩人か、知らなかった。



「大岡信」

 昔同人誌の同人のひとりに、「大岡信の家に遊びに行きませんか?」と言われた。自分が何者でもないのに、会いにいくのはどんなものかと思って断った。しかし、大岡信と口を聞いたことはある。早稲田小劇場の利賀村の芝居で、招待客は列を作っていて、私は熱烈なファンで会員だったので、その招待客のすぐ後ろぐらいの番号だった。「あ、大岡信だ」と思ったが、番号を聞くことにした。「すみません、何番ですか?」と言って、自分の番号札を見せた。大岡信はそれをのぞき込み、「×番……ぼくの後ろだ」と言ってくれた。さっぱりとしたよい人だと思った。私は大岡信を愛読していた。



「田村隆一」

 知り合いの編集者が「田村隆一は自分の恩人だ」と言った。結婚式にも来てもらったらしい。しかし私がそれを聞いた時、すでに田村隆一は、「書斎の死体」だった。いろいろあった人のようだ。急に近くなったような気がして、詩集を開くと、あれこれ連想してしまって、もう普通の読者にはなれないのだった。



「篠田一士」

 篠田一士は、詩を熱愛していたと思う。『現代詩髄脳』とか『現代詩人ナントカ』という著書があり、どれもこってり、詩と詩人のことで埋め尽くされ、氏の生前の肉体のように、脂が詰まっている。文章もそうで、半分は脂だ。
 当然、この人との間にも、たった一人の人しかいないので、すぐに触れる人のように思える(だが、決して触りたくはないが)。


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