『ラ・ラ・ランド』──ポストモダンのミュージカル(★★★★★) [映画レビュー]
『ラ・ラ・ランド』( デイミアン・チャゼル監督、2016年、原題『LA LA LAND』)
60年代のファッション、カラー、アイテムなどを材料にした(「映画の現実」の時間は、スマホ、プリウスなどがある、21世紀の現在)、まったく新しい切り口の「ミュージカル」で、さすが、ハリウッドの職業組合も、その点を評価した、今回のノミネートだと思うと、ハリウッドも捨てたものでない、そして、時代は完全に変わっていると思われる。
本作に不満を持っている観客は、いにしえのミュージカルが頭から抜けないのだと思う。これは、のっけから、まったく新しい切り口であることが知らされる。ここで、理解できないと、それは、最後までひきずってしまうことになる。
私はこれまでミュージカルはあまりすきでなかった。というのも、ストーリーはお飾りで、繊細な心理までは描かなかった。雨のなかでノーテンキに踊る男に、共感はできなかった(笑)。
それが本作では、ジャズの神髄から、時間への考察などが、登場人物の男女の繊細な心理ものとして表現されている。
それに、女優が女優を演じたり、ハリウッドそのもの題材にすることも難しいが、その難しさを大胆にクリアしている。
俳優たちも、肉体を十分に駆使して、演技が本来、肉体運動に近いことを教えてくれる。
それに、オマージュ、というより、さまざまな「引用」が洗練されている。とくに、フリージャズ志向のライアン・ゴスリングは、ビル・エヴァンスを思わせなくもない。
夢とは叶えるもの。ジャズとは脱構築である。ということをあらためて認識させてくれる。
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