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『フリー・ファイヤー』──ヌーボーロマンのハードボイルド(★★★★★) [映画レビュー]

『フリー・ファイヤー』ベン・ウィートリー監督、2016年、原題『FREE FIRE』)

 

 とある70年代、どーでもいいギャングたちが、どーでもいい銃取引を、場末の廃工場(それはのちに、傘製造工場とわかる)で、することになった。南アフリカから来た、高級スーツのオッサンやら、元ブラックパンサーの黒人やら、アイルランドの元闘士風やら、190センチ超のダテ男やら、そんなにアバズレには見えない女ギャングやら……。そして、どーでもいいような「下っ端」に見えたもの同士が、前にケンカしていたことがわかり、そのケンカの続きが、銃取引が無事すんだと思われた時点から始まってしまって、これが、だんだんエスカレートして、廃工場は銃撃戦の場所と化し、おまけに、スナイパーまで登場して、でもそのスナイパーは、元ブラックパンサーが雇っていたやつららしく──。

 

 美丈夫、アーミー・ハマーの、ナルシストぶりとか、キリアン・マーフィーの、クールなガンさばきとか、ブリー・ラーソンの、確かに『ルーム』の時とは完全に違った役柄なれど、どこかに、かわいらしさを残していたりとか、昔の「撃ち合いモノ」にはなかったキャスティングが新鮮である。しかし、あくまで、70年代なんで、「カーステレオ」から流れる曲は、ジョン・デンバーの妙に明るい間抜けた曲。撃てども撃てども、弾は当たっているのに、急所には当たらない? みんななかなか死なないなと思っていると、後半どんどん死んでいく。食事の約束をしていた二人、マーフィーとラーソンが残り、マーフィーは地面に倒れたまま瀕死の傷を負っている? 足を引きずりながらラーソンが金の入った鞄を取り、「食事の約束、できなかったわね」とかなんとかマーフィーに言う。「ま、いいさ」とマーフィーは言い、ラーソンは、ちょっとすまなそうな顔をして去っていく──。ラーソンがふと後ろを振り返り……恐怖の表情に変わる。暗転。パトカーのサイレンの音。彼女が見たものは誰か? 

 

 場面はほとんど、その廃工場だけ。なんなの、これ? はい、ヌーボーロマンのハードボイルドです。





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