『カフェ・ソサエティ』──おもろうてやがて眠たきアレンかな(★★★★★) [映画レビュー]
『カフェ・ソサエティ』(ウディ・アレン監督、2016年、原題『CAFE SOCIETY』)
ハリウッドでプロデューサーとして成功した叔父を、怪優、スティーヴ・カレルが、またして「なりきり」であるが、これがどうみても、ドリフターズの荒井注にしか見えず、しかも、本作ヒロイン、猫目のクリステン・スチュワートが猫にしか見えず、お相手、世間知らずのボビー、ジェシー・アインゼンバーグが、やはりネズミに見えてしまって──(笑)。
確かに世界はユダヤ人によって作られている、よいも悪いもユダヤ人。そこをいつも通り、皮肉かつ冷静に見つめるウッディ・アレンの反骨精神は衰えず。
一家なんだけど、それぞれがマチマチというところがおもしろい。まずボビーなる世間知らずの青年がいて、その母親が皮肉屋で、いつも夫のことは馬鹿よばわり、ハリウッドで成功しているとかいう弟のところへ電話をかける。「ローズだけど」「ローズ?」「あんたの姉の」「ああ。ここの番号どこで知った?」「メイドから聞いたのよ。息子のボビーが訪ねていくのでなんか仕事を紹介してあげて」
ボビーは三人兄弟で、姉と兄がいて、兄はなんとギャングなんだが、家族は実業家と思っている。姉だけが事情を知っているような気配。隣人がラジオの音を大きくしていて、姉の夫(共産主義者のインテリ)が注意したら、逆ギレして「おまえんちの犬を撃ってやる!」姉は頭痛がしてギャングの弟に「注意して」と相談する。弟は、「いつもやってるように」、その隣人を殺してコンクリート詰めにしてしまう。
一方、末っ子のボビーは、叔父に身の回りの雑用係としての仕事を与えられ、美人秘書のヴェロニカ、通称ヴォニーに一目惚れ。実はヴォニーは叔父の愛人で……は、よくある話。「いろいろあったが」、やっぱりヴォニーは、妻と別れた叔父と結婚し、ボニーはニューヨークへ帰るも、兄と「カフェ・ソサエティ」を共同経営する。兄は悪事が発覚し、死刑になる。しかし、一家は、兄の葬式をすませても平然としている。そこから何も話は発展しない。
要するに、ボビーだけが、出世(兄のカフェを継ぐ)して、金持ちになり、もうひとりのヴェロニカ、ブレイク・ライブリー扮する美女と結婚して子供ももうけるが、再会した「前のヴェロニカ」が忘れられず、秘密の逢瀬。「二人のヴェロニカ」でも、第二のヴェロニカのライブリーはやや役不足。なんのことはない、ボビーと第一のヴェロニカの恋が色濃く全面に出て、あっという間に終わる。お互いを思いつつふっと遠い目のヴェロニカとボビーを交互に映し、寝落ちした瞬間(爆)、「いけねっ」と思って目を開けたら、エンドクレジットが流れていた──(爆)。
どーなんですか? これ。前半はなかなか皮肉が効いておもしろかったけど、後半、ただの「ラ・ラ・ランド」になっていて……(笑)。「老体でもすごい」のか「やっぱり老体」なのか。しかし、あの黄色のレポート用紙に、ベッドに腰かけて、さらさらと脚本を書いてしまう様子を浮かべると、やはり私淑のアレンだった(笑)。クリステンがシャネルのCMに起用されているので、衣装提供はシャネルでした。私も以前、つられて、マスカラとライナーを買ってしまいました(ほとんど使ってないんですが(笑))。
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