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『パリ、恋人たちの影』──「見ること」の喜び(★★★★★) [映画レビュー]

『パリ、恋人たちの影 』(フィリップ・ガレル監督、2015年、原題『L'OMBRE DES FEMMES/IN THE SHADOW OF WOMEN』)

 

Duras ou Garrel peut-être, parce qu'ils sont plus près du roman pur, si l'on peut dire, ou de la peinture. Moi, j'ai toujours bien aimé les deux. Et puis ce qu'il faut inventer, c'est le système dans lequel on peut créer.

(Entretien réalisé par Jacques Drillon, Le Monde de la Musique,no55, avril 1983, "Jean-Luc Godard par Jean-Luc Godard)

 

(あるインタビューで、ゴダールは自分は作品を創作はしていない(アレンジなどをしているにすぎない)と言い、「ドュラスやガレルはそれをしている。彼らの作品は、ぼくは好きなんだが、純文学や絵画に近いのだから。というのは作品を創作できるというのはシステムなんだ」(1983年、『ル・モンド・ド・ラ・ミュジーク』誌のための、ジャック・ドゥリヨンによるインタビューより)

 

*****

 

 男と女がいる。彼らは夫婦である。夫はドキュメンタリー映画を撮っているがいまだ認められない。妻は自分の道を捨てて、夫の制作を手伝っている。夫がふとしたことで若い女に出会い、肉体関係を持ち、それを続ける。しかし、夫の愛人は、妻の方も男と会っていることを目撃して彼に告げる。自分の浮気は隠し、妻を責める夫。途中、夫の仕事として、レジスタンスの老闘士へのインタビューが挟まれる。いったんは言い合いして別れてしまった夫婦が、このレジスタンス老闘士の葬式で出会う。そして、よりを戻す──。てな話はどこにでもある、かもしれない。お話はどうでもよくて、「眼に」残るのは、夫の愛人の、アルモドバル映画系のブスぶり、妻の母親の、みやこ蝶々+京唄子(古いか(笑)?)ぶり、老闘士(これが、大嘘で、実はナチ系と、葬式時に、妻のセリフで知らされる)の妻のマルグリット・デュラス風よぼよぼでも、インタビュー中、クッキー缶を持ち出して「どう? 私が作ったのよ」などと、主張するぶり……などなどが、白黒フィルムの、「影」が美しい構図の中に配置され、ゴダールが大好きな「見ること」の喜びを、われわれにも教えてくれる。雰囲気はクラシックながら、ケイタイ電話なども出てくる、まぎれもなく「現代」なのである。

 

 

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