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『三度目の殺人』──まず脚本がでたらめ(★★) [映画レビュー]

『三度目の殺人』(是枝裕和監督、2017年)


 


 アメリカ映画ではよくあるんですね、こういうの。父親が殺されて、犯人は前科ありの従業員で、その従業員と、被害者の高校生の娘はつながっていた。妻とも意味深なメールを交換していた。これはもう、その父親が、娘をレイプしていて、その犯人に相談していた。母親は見て見ぬふりをしていた。こういうスジを、是枝監督は自分で考えたんです(笑)。それを、何か思わせぶりの音楽(は、いつも美しいのが特徴であるが)に合わせ、映像もスタイリッシュにしています。とくに、犯人役所と、弁護士福山雅治が、拘置所の面会室の仕切りを隔てて何度も「対決」するんですが、カメラアングルがすばらしいです。ここまで、この仕切りの両者をすばらしく描いた映画は見たことがないと思いました。


 


 しっかし、役所の草履の裏のような汚い顔に、あごだけ白人のように「お直し」したのかしないのか知らないが、不自然にくっついていて、どうもそこに眼がいってしまう。福山の方は、まあ、天然なのではないかと思いますが。さすがに福山、「パパラッチ」役もサマになっていましたが、今回の弁護士役もハマってる。この人は、絵になりますねー。演技もうまいし。やはり福山あっての是枝だと思いますね。しかし、この脚本、まんま黒沢清が撮れば、当然、役所の役は、香川照之でしょう(爆)。あの爽やか、斉藤由貴が、いやらしい中年女の母親を演じていて、その変貌ぶりにびっくりです(が、タダそれだけ(笑))。


 


 私はまずリアリティを考えますが、父親にレイプされていた少女が、突然前科者の気味の悪い男に悩みを打ち明けるでしょうか? 飼っていたカナリア5匹のうち、1匹は逃がしたというが、4匹は殺して埋めたのでしょうか? 小鳥の墓の、小石で作った十字形、少女の父を殺して焼いた跡の十字形、そして、人は「器」というどこかで聞いたふうな、おそらく聖書からの引用でしょうが、それが、残念ながら物語の核にはなり得ないんです。というのも、すべて言葉で説明されているにすぎなくて、カット割りは凡庸なミステリーじたてです。こういう失敗した脚本に、哲学を見るなどというアタマはどーゆーアタマだ? と私は問いたい!(って、そういう映画)。


 


 映像はそれなり魅せる部分もあるので、星は三つとしたいところだが、それはある意味評価になってしまうので、今回、二つとさせていただきました。もー、広瀬すずは出てきただけで、どーゆー存在か、答えが顔に書いてあるようで、困ったナー(笑)。


 あ、役所の役が完璧でできる役者は、ケヴィン・スペイシー以外にないと思います。あと、エドワード・ノートンとか。表情がキモなので、扁平顔だけでなく、集中力の度合いが違う、日本人役者は無理。ましてや、整形などしていると、表情筋はさらに微妙さが出しづらくなる。眼がちっこくたって、渥美清はいい味出してた。



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