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『ドリーム 』──黒人女優たちのイメージは変わるだろう(★★★★★) [映画レビュー]

『ドリーム』(セオドア・メルフィ監督、2016年、原題『HIDDEN FIGURES』)


 


 IBMの汎用コンピューターが「やっと」NASAで買えた時代(1960年代初頭)、アメリカはソ連と、宇宙開発競争をしていた──。あのアポロ13さえ、電子計算機は頼りにならず、大気圏再突入角度を、計算尺で計算しなおさなければならなかった──。「宇宙」とはいえ、まだ、ほんの大気圏の外へ出て、地球の周囲を何周かするという程度だった。「宇宙船」もどこかちゃちで、これでは乗る方もコワイだろう(笑)。


 


 そういう時代のNASAの技術を、黒人女性たち、それも差別されながら学位を取った人々が、差別されながら、NASAで重要な仕事(必ずしもポストと対応していたわけではない)をしながら、「宇宙開発」、やがては、人類の月面着陸へと続く道を切り開く技術を陰で支えていた──。


 


 驚愕以外のなにものでもない。数学の天才で、宇宙船の大気圏再突入角度や落下地点を計算してみせるキャサリン・G・ジョンソンを演じるタラジ・P・ヘンソンは、新鮮な風貌で、これまでハリウッドの白人女優に食傷ぎみの観客の眼を奪う。


 「計算部」を事実上管理しながらも、地位はヒラのままのドロシー・ヴォーンは、ひそかにプログラミング用語のFORTRANを勉強し、IBMから買った大型コンピューターを扱ってみせる。そんな骨太のヴォーンを『ヘルプ』で、アカデミー賞とゴールデングローブ賞を獲ったオクタヴィア・スペンサーが演じる。


 そして、技術者のメアリー・ジャクソンは、NASAでのキャリアアップのために、条件である白人男子校卒を獲得しようと裁判に持ち込み、独自の論理で保守的な判事を説き伏せる。可憐な容姿がやはり白人女性には不可能なジャネール・モネイが演じる。三人の黒人女性たちが、ここまで知的に魅力的に描かれた作品をほかに知らない。本作こそ、黒人女優への偏見を取り除くに違いない。


 


 白人丸出しで嫌な女を演じるキリステン・ダンストなどが脇役にまわり、ケヴィン・コスナーの貫禄と知性の渋さが画面をぐっと引き締める。これまた、まったく新しいエンターテインメント映画と言える。


 


 


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