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『アトミック・ブロンド』──J・ボンドは完全に負ける(笑)(★★★★★) [映画レビュー]

『アトミック・ブロンド』(デヴィッド・リーチ監督、2017年、原題『ATOMIC BLONDE』


 


 まず、シャーリーズ・セロンの、バレエで鍛えた完璧な肉体と大柄なガタイがあってこその、アクション映画である。物語としては、イギリス諜報部 V.S. ソ連KGBのスパイ合戦が基礎になっていて、その二重スパイがポイントになる、ちょうど、ル・カレの『裏切りのサーカス』と似たような状況設定である。俳優陣も、そこで見たような面々が見受けられる(印象である)。


 


 シャーリーズ・セロンは、キアヌー・リーブスの妻を演じた『ウロボロス』で初めて見たが、この監督は、彼女を、「美しすぎる」と表現していたことを覚えている。「美人すぎる」などという表現がいま跋扈しているが、「美人すぎる」のではなく、「美しすぎる」。美しい人など掃いて捨てるほどいるハリウッドで、とくに美しいのがシャーリーズらしいが、それゆえ、一歩間違えると、というか、ちょいとメイクを変えれば、醜い女に変身「できて」(笑)、過去にもそういう女を演じてきた。さっと裸になってしまう率も高いが、その肉体には、実は女の媚びはまったく感じられない。


 事実、本作は、「お色気」は抜きなのである。生身でヒロインが戦い抜く。といっても、「ワンダーウーマン」のあの大味とも違う。戦う姿がさまになり、それが物語を含んでいるのである。


  


 全身傷だらけのロレーン(シャーリーズ・セロン)が、MI6の上司に、任務の報告をする場面から始まる。そこにはCIAのオッサン(ジョン・グッドマン、間抜けなデブ役が多かったが、眼鏡をかければ(笑)、それなりの官僚顔)が同席している。「クソCIAは外してもらいたいな」とロレーンは言う。しかし──。


 


 時は、1989年、まさにベルリンの壁が崩壊する直前。そういう時代を背景に、そのまさに東西のベルリンで、この物語は展開する。音楽がいい。ファッションもいい。ウォッカのロックを、まるで水のようにうまそうに飲むこのヒロインに比べたら、マティーニのジャームズ・ボンドは、まるでヤワ(笑)。さまざまな最新機器の助けを借りて敵と戦うボンドだが、ロレーンと一対一で戦ったら、完全に負けるだろう。


 


 最初に映される、バズタブから身を起こすヒロインのヌードの背中の、その肩と腕の筋肉がすごい(笑)。以後のアクションを完全に納得させる。


 で、結局、MI6のハンサム、ジェームズ・マカヴォイがKGBと通じていたことをつきとめたロレーンは、彼が二重スパイ「サッチェル」であることを告げながら殺すが、その後、自分がKGBの男とパリのホテルで会い、スパイのリストが入っている腕時計を渡す。しかしKGBはそこで彼女を始末しようとする。しかし、彼女は反撃し、KGBたちをも血祭りにあげる──。


 


 で、「クソCIAは外してもらいたいな」と言ったところへ戻ると、彼女こそ、「サッチェル」、CIA部員だったのである。ジョン・グッドマンのオッサンが待つ、公用璣へ乗り込んでいくのだった。彼女の協力者は、ボンドのような最新機器開発者たちではなく、東ベルリン在住の、怒れる若者たちだった、というのもかっこいい。


 


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