【詩】「雨」 [詩]
「雨」
ゆくへなき秋のおもひぞせかれぬる村雨なびく雲の遠(をち)かた
雨が頼朝の死体の中にも染み込んでいく朝、私はきみの死体のことを考えている。やがて蛆虫がきみの美しい頬に穴を開け、私が愛したきみのやわらかい唇をこじ開けて、きみの内部へ、
神よ、日本の、かたちのない神よ、
雨の哲学を少し私に。
そして雨は時代の刻印を打ち消し、そしらぬ顔をして、きみの感触も消していく、秋
だけが、きみに贈る欲望のあかしとなるの
かな? それは、
熱ではなく、エントロピーでもなく、
雨のようなもの。
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