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『アジャストメント』──SFがラブ・ストーリーだっていいじゃないか [映画レビュー]

 政治モノなのか、SFなのか、ちょっと変な気持ちを抱くような作りである。まあ、原作がフィリップ・K・ディックなら、さもありなんという感じである。本作の主人公を、トム・クルーズが演じたら、安心してSFと思えたかもしれない。しかし、マット・デイモンだと、われわれはどうしても、もう少しホネのあるスパイものを自然に期待してしまう。話が進むにしたがって、そういう期待はどんどんはぐらかされていく。
 NYに雨が降る。なんかいい感じである。湿った船着き場。キーパーソンから借りたパナマ帽をかぶって、マットが走り出す。雨のNYを。音楽が劇的に変化する──。
 結局、ラブ・ストーリーである。ラブ・ストーリーはどれも陳腐である。だからラブ・ストーリーなのだが。SFがラブ・ストーリーだっていいじゃないか、と納得して帰れば、少しは救われた気分になる。

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アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)

アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)

  • 作者: フィリップ K.ディック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/04/30
  • メディア: 文庫

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