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『少年と自転車』──加害者と被害者 [映画レビュー]

 ジャン=ピエール・ダルデンヌ 、リュック・ダルデンヌ監督『少年と自転車』

 

 まず、ダルデンヌ兄弟監督の作風は、ドキュメンタリーよりも、さらに「リアル」を見せてくれるということである。それは、一カット一カットに、豊富な情報を提示しながら、不必要な情報はいっさい入れていないという、みごとなフレーミングにある。終盤、少年が自転車に乗って、里親の家で開かれるバーベキュー・パーティーのための石炭を買いに行くシーンにカメラは伴走する。このシーンが長い。しかしそれは、自転車を自己のアイデンティティーとしている少年の心の充実を見せている。

 親から見捨てられ、施設で暮らす少年の過酷な状況と、里親によって癒されることによって遂げる、彼の精神的な成長を、日常的なセリフを積み重ねながら、なんら説明的な言葉をシーンを用いることなく描いている。なるほど、少年は父親から捨てられるが、昨今の日本に見られる虐待よりよほどマシだと思える。そしてその父もぎりぎりの生存を息子に示す。彼は徐々に、愛というものを、正義というものを知っていく。それは、加害者と被害者の境界があいまいな世界を受け入れることである。このテーマは、ダルデンヌ兄弟の過去の作品『息子のまなざし』でも問われていた。

 今、こういう映画を観ないで、なにを観るというのか? そこには、日本映画が覆い隠して知らん顔をしている、子供というもののリアルがある。余談ではあるが、映画.comの批評氏も、ダルデンヌ兄弟は観ていないのか、ひとりよがりの精神論に終始していた。いわゆる「プロ」の批評家の意味がほとんどないのでは……?

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「お写真」は、「春の弁当」
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