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『グレート・ビューティー/追憶のローマ』──反ローマ映画 (★★★) [映画レビュー]

『グレート・ビューティー/追憶のローマ』パオロ・ソレンティーノ監督、2013年、原題『LA GRANDE BELLEZZA/THE GREAT BEAUTY』) (2013)


 


 さまざまな偉大な先達へのオマージュが折り込まれている作品と見たが、とりわけ、くっきりと明確なのは、主人公が、本来は作家を目指しながら、「ジャーナリスト」で生計を立てている、主人公は、まさに、『甘い生活』のマストロヤンニである。そして、最後、作品を「書き始める」ところに戻るのは、作中でも何度か言及された、プルーストの『失われた時を求めて』である。


 本作を、カトリック的な映画と取ってしまう人は多いが、むしろ、そのカトリックを茶化した、大胆な反カトリック映画である。そして、ローマに対しても、賛美ではなく、挑戦である。帝国時代から始まり、ルネッサンスを経過して、ありとあらゆる芸術的富を蓄積してきたローマは、未だ、その「富」を使い切れずにあえいでいる。その断末魔を描いたものと見た。


 ま、それはそれでいいのだが、私がいまいち酔えなかったのは、トニなんたらっていう役者は知らなかったが、どうもキャストたちに魅力がない。マストロヤンニも、ヘルムート・バーガーもおらず、ジャン・カルロ・ジャンニーニも老いぼれてしまった。イタリア映画は死んだ。死んで、ではどういう作品ができるのかと言えば、それを未練たらしく追求した映画でしかない。


 唯一印象的なのは、数分もないカットの、夜の階段ですれ違う、ファニー・アルダン「その人」である。


 「ボンヌ・ニュイ(おやすみなさい)、マダム・アルダン」


 すでに数歩階段を下りていたアルダンはふり返り、「どなたでしたっけ?」というような表情を一瞬浮かべる。ほんの少しの間ののち、微笑し、


 「ボンヌ・ニュイ(おやすみなさい)」と答えて去っていく。それだけの場面である。アルダンはかつてブルネット(黒髪に近い髪)であったが、その場面では金髪であった。白人は白髪になると、黒髪系でも金髪に染めてしまう人が多いが、その類である。


 本作に与えられた数々の映画賞は、フェリーニやマストロヤンニに与えられた賞のように思えてならない。


 


****


 


余談ですけど、私もかつて、『甘い生活』を「パロった」小説を書いたんですけどね〜(笑)(文芸誌『すばる』(集英社)の1990年11月号だったかな〜?)本にして欲しかったわあ〜(涙)。


 


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