『フライト・ゲーム』──うまい!(★★★★★) [映画レビュー]
『フライト・ゲーム』ジャウマ・コレット=セラ監督(2014年、原題『NON-STOP』
飛行機の内部はかっこうの密室で、このテの映画はよく作られている。たいていは、ハイジャックされ、その犯人(グループ?)とどう戦うかがドラマの焦点になってくるが、もうそういう単純なものでは今の観客はついて来ない。リーアム・ニーソンも、似たような、屈折した孤高公務員(CIA、航空保安官などなど)が、犯人と戦う、という役柄をこなしてきたので、「またか」感が否めない。しかし、この、どう見ても、「アイルランド生まれ」(たとえ「米国籍」の役柄でも)に見えてしまう長身のオジサンには、ゆったりとしたホームドラマは望めないのか。渋いカオして、全身を使って戦うしかない。
しかし、本作、なかなかうまいのである。犯人は二人組だが、二人の事情はそれぞれ違う。犯人が姿を現すまでがまったく読めない。いかにも怪しいやつは、たいてい犯人ではないが、一度疑った人物が犯人なのだが、その疑った理由が、真相とは違った疑いなので、さらに読めなくなる。
機内の緊迫感も、でティールを抑えながら、きめ細かに作られている。ジュリアン・ムーアがうまい。彼女は、結局、最後まで職業はわからないが、謎の女は謎なりに、シロであることがわかる。謎の女ながら、微妙な感情をよく表現している。こうした物語に必要な、ロンドンで待つ父親に会いに行く、幼い少女も乗り込んでいるが、彼女への優しさの表出なども、この女優の奥に潜む優しさが滲み出て、ほっとさせられる。
航空法の細かい紹介や、スマートフォンのプログラミングなども、一般人が知らない知識も紹介しつつリアリティあるドラマにしあがっている。
最後のクレジット+音楽も、劇的余韻を定着させて、よい。
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