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『毛皮のヴィーナス』──Hが欠けている(笑)(★★★★) [映画レビュー]

『毛皮のヴィーナス』(ロマン・ポランスキー監督、2013年、原題『LA VENUS A LA FOURRURE/VENUS IN FUR』)


 


 なにかありげな街路、雨、雷、そして古びた劇場……の、THEATRE(テアトル)という看板の文字の、Hの字が抜け落ちている……。なんのシャレか、本編も、サドとかマゾとか、がなりたててはいるものの、全然Hではない、というか、エロスも興奮もない。ただ、「ちゃんとしたセリフ」があるのみ。とくに、「ヒロイン」の、エマニュエル・セニエのセリフ廻しはすばらしい。舞台でそのまま使える。物語は、だいたい見当のつく展開。というか、すでにチラシなどにも書かれている程度で、意外な展開はなにもなく、観客が待っていたように進んでいく。しかしながら、最後は、まー、いにしえの早稲田小劇場を思わせたな〜(笑)。白石加世子がワンダを演じたら、もっと恐くなっていたらだろうに……(笑)。


 しかしながら、セニエの下品ぶりと、それを逆手にとった、「ほんとうは教養あるのよ」ぶりは、毎度「おフランス女」の常套手段である。こういう女には要注意。というか、おフランス人で、いちばん尊敬されるのは、こういう女である。どういうことかというと、画面には出ない、ちょいインテリの演出家、アマルリックのフィアンセ、育ちがよくて博士号も持っていて背が高くて美人で若い……つまりなんでも持っている「金持ち子女」へのアンチテーゼ。これが、フランス共和国の標語、「自由、平等、友愛」を支えているのである(ほんとかよ?)。


 だから、まー、ポランスキーもよーやるわ、で、星は、四つ。最後は、映画から演劇へ転換していたし(笑)。


 あ、この女、ほんとうはプロ根性の謎の女優ではなく、おそらく、ほんものの、女神なんだろう。私はそう思った。女神っていうのは、存外こういう姿をしているものである。それでこそ、説明のつく映画である。そういうものを平気で出してしまったポランスキーも、もう殿堂入りの境地であろう。


 見どころは、セニエの「一見」安っぽい衣装。とくに、劇中、毛皮の代替物となる、手編み風マフラー。クレジットを見るかぎり、プラダ? 鞄はヴィトンなのか、日本のギャルが持ってるような普及品じゃなくて、とくべつ仕様。


 もっとHを欲している向きには、かなり昔に映画化された、『O嬢の物語』をオススメします(笑)。

 

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