佐藤優著『超したたか勉強術』──いま、あなたに必要なサバイバル [Book]
『超したたか勉強術』(佐藤優著、朝日新書、2015年4月刊)
佐藤優の著作は実に多く、何かが少しずつ重複しているので、昔読んで、この著者の「思想」はわかっていると思うかもしれない。しかし、氏は氏なりにアップデートしている。そして、この著者の専門は、「宗教学」だし、外務省で、インテリジェンスの技術を身につけているし、ロシアにも長年赴任していた。こういう経歴から、氏がなにに強いかがわかるだろう。確かに氏の思い込みは強く、その「濃さ」(顔も含めて(笑))に辟易するムキもあるだろう。しかし本書は、今がサバイバルの必要な時期で、しかもそのサバイバルのため勉強術が公開されている。いま必要な勉強術とは、古典などを読むベーシックな基礎的勉強と、ネット、新聞、雑誌などから、ジャーナルな情報を選択、読み解き、この二つから、自分の頭で考えることだろう。氏はそれを、「思考の鋳型」を鍛えると言っているが、ワタシ的には、「フレーム」を作ることではないかと思う。
本書がすごいのは、勉強術を公開しつつ、「シャルリー・エブド襲撃事件」と、「イスラム国日本人人質殺害事件」を解析しているところである。この二つの事件に関しては、『現代思想』誌などが特集を組み、多くの識者が見解を寄せているが、具体的な事実を並べて解析している手腕は、やはり、インテリジェンス活動をしていた氏の分析が最も納得させられる。
氏は、神学出身のプロテスタント教徒であるし、完全なるリベラルでも右翼でもない。一定の固定した立場にあることはある。そのあたりを斟酌しつつ学べば、本書は非常に価値のある本である。
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