SSブログ

『マジック・イン・ムーンライト』──恋愛の王道(★★★★★) [映画レビュー]

『マジック・イン・ムーンライト』(ウディ・アレン監督、2014年、原題『MAGIC IN THE MOONLIGHT』) 


 これはですね、恋愛物語そのものなんです。しかも、ウディ・アレンだから、相変わらず「前衛」。もう達人の領域に達しているアレンは、べつに、落ち目のヒーローに舞台をやらせて、「前衛丸出し」風の映画にしなくても、デビュー作(『なにかいいことないかい子猫チャン』?『誰でも知りたがっているのになかなか聞けないセックスのすべて』?)以来、ずーっと前衛なんです。いつも、俗物を嗤いのめしながら、見せるところはちゃんと見せる恋愛の王道を撮る。


 だいたい観客が映画館になにを見にいくかといえば、つまるところ、美男美女の恋愛なのである。今回は、コリン・ファースとエマ・ストーン。いいですね、男は。もうコリン・ファース、54歳なんですよ。エマ・ストーンの母親のマーシャ・ゲイ・ハーデンより1歳下なだけですよ。


 ま、それはともかく、他の方の(プロも含めて)レビューを見ていると、この二人が、いつ恋に落ちたかのかを問題にしている。これは、決まってるじゃないですか。初めて会った、その瞬間ですよ。それが恋愛ってもの。おそらく、「波動」がピタっときたのでしょう(笑)。それからは、いかに「相手につれなくするか」が、恋愛道のテクなんです。だってそうでしょう? この映画の中の御曹司みたいに、最初から「きみはすばらしい!」「愛してる!」「なんでも買ってあげる!」なんてオトコ、どこに魅力がありますか? え? ヴァン・クリーフ&アンペル(スポンサーとしてクレジットあり)の宝飾品の類? 恋愛というものは、「お金では買えない」んです。そして、この映画、初めからハッピー・エンドはわかっている。さて、どうやってそこまで、紋切り型を避けて導くか。それが腕の見せ所なんです。今回もアレンはやってくれました。終盤の、ヴァネッサおばさんとスタンリーの会話がすばらしい。決しておしつけがましいことはいわないけど、会話でもって甥の本心を露わにしていく。


 でかい態度、一度も「きれい」と言わない、そんなオトコの「提案」を誰が受け入れる? しかも、私の薬指には、でっかいダイヤがあるんですからね。『金色夜叉』では、「みやさん」はダイヤモンドを取った。それは恋愛を知らない東洋の女だったから。西洋の女は、恋愛を知っている。そして、ウィットでお答えする──そういう映画なんです。どうぞ、若いみなさん、本作から恋愛のイロハを学んでください。


 あ、そうだ。皮肉屋スタンリー、自分のことを、「ぼくは、ミザントロープだから」と英語で言ってました。『ミザントロープ』、すなわち、モリエールの『人間嫌い』(の原題)。引用は、シェークスピアとニーチェだけじゃなかったんです。今回も、大金持ちをまんまと嗤いとばしました。快哉!


 


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。